ツイッター担当者のトレーニングプログラム(担当引き継ぎ編)

ソーシャルメディアの活用を検討されてる企業の方からは「始めるのは自分ががんばればいいけど、それだけでは不安だ」という相談もよくいただきます。
企業としてやる以上、担当者の異動や退職によって引き継ぎをしなければならないケースは避けられません。当然、最初から複数人で対応していれば急に慌てることもないのですが、その場合も新しく担当者として加わる人間にはトレーニングをする必要がありますので、あらかじめトレーニングプログラムを作成しておくことをオススメします。

前回に続き、今回はツイッターを例に担当者を引き継ぐ場合のトレーニングプログラムを用意しました。ぼくの実体験に基づいて作成しているので、それなりに有効だと思っています。

(新規に始める場合のプログラムは前回をご覧ください)

ツイッター担当引き継ぎプログラム(2010.8.31版)

このプログラムはじっさいにブックオフオンラインのアカウント(@bookoffonline)を引き継ぐ際に使用しました。新担当者がブログへのアクティブサポートの経験者だったので、途中の期間を短くした部分はありますが、ツイッターは未利用だったため最初の1ヶ月はプログラム通りプライベート利用のみとしました。

担当者の移行について

移行期間に2-3ヶ月を想定しています。
ただし新担当者がすでにツイッターを使っている場合は1ヶ月は短縮可能。

この引き継ぎプログラムの狙いは当該企業アカウントがそれまでに築いてきたユーザーとの信頼関係を壊すことなく、従前通り継続できるようにすることです。それはさほど難しい話ではなく、親切さや誠意など原則的な姿勢さえ間違わなければ誰に引き継いでも問題ありません。

新担当者の人選と当面の対応レベルについて

新担当者の人選は希望者が自薦してくることもあれば、担当者の離職により急遽同じ部署内、チーム内から指名することもあると思います。その場合も「ユーザーと築いてきたコミュニケーションを断絶しないこと」をひとまずの目標に置き、よほどコミュニケーション能力に問題がない限りは誰がなってもかまいません。

ただし新担当者の能力によって当面の対応レベルを設定する必要はあります。
ユーザーとの会話を強く求めている人が立候補した場合は、積極的にアクティブサポートとして活用する方向で考えればよいでしょう。具体的には、展示会等のイベントで来場者の応対を喜んでする人やカスタマーサポートを天職だと思っている人が新担当者になるのであれば、これまでと同様かそれ以上に深くコミュニケーションできるようにサポートしてあげましょう。
一方でそれほど積極的ではない場合は、消極的に活用する方向で考えざるをえません。この場合は企業側から話しかけていく頻度が下がることも容認し、その代わりユーザーからのリプライやDMで直接話しかけられたケースは必ず応対するというルールにしましょう。もちろん本人がユーザーとの対話をまったく望んでいない場合は明らかに人選ミスなので別の人間を選び直すべきです。

具体的な移行プログラム

いきなりアカウントの管理を丸投げしてはいけません。緩やかに段階的に移行するのが望ましいです。
もちろん離職や事故など、引き継ぎに十分な時間が取れないケースも想定されますが、だからこそできるだけ早い段階で複数名での運用体制にすることをオススメします。

具体的な以降については以下の手順で行なうとよいでしょう。

個人でツイッターを体験【1ヶ月】

(すでに利用してる場合はスキップしてかまいません)

新担当者にはまず個人でツイッターのアカウントを取得して利用してもらいます。あくまでも個人として利用すればいいので所属企業などを公開する必要はありません(ただし会社を代表する発言をしないことが前提)。

最低1ヶ月は利用して、その間に100回以上のツイート、さらに20人以上をフォローして日常的に使ってみましょう。
またパソコンだけでなく、ケータイでも利用してみる。専用アプリの存在を知らない場合は教えますが、試してみるかについては本人の自由とします。

ここでのポイントはツイッターユーザーの気持ちを理解することです。やり取りされる会話からツイッターというコミュニティの「空気」を感じ取れるようになればオッケーです。またRTやDMなど、ツイッターの仕組みや名称をきちんと理解しておくのも重要です。

なお企業アカウントをフォローする必要はありません。優先すべきはあくまでも「これまでの自社アカウントとユーザーとの関係を継続すること」で、新しい取り組みは先々に考えればよいです。

過去のやり取りを学ぶ【1-2日】

新担当者には自社アカウントの対話履歴を読んでもらいます。すべての履歴を読む必要はありませんが、100回以上のやり取りは読むようにしましょう(もしあれば)。
現担当者がユーザーに対してリプライした内容で「なぜそうコメントしたのか」が不明な場合は、メモを取っておき、あとで確認するようにしてください。

この時点で頻繁にコメントを寄せてくださるユーザーを覚えるのが望ましいですが、これは対応履歴を読んでいれば自然と覚えるはずです。

対応ルールを説明【1-2日】

企業独自の対応方針、投稿ルールを伝えます。
それほど細かく定めても覚えられないので、おおまかに10個程度のルールを文書化しておきましょう。

この時点ではそれが正解かどうかについて議論しません。あくまでもスムースに引き継ぐことだけを考えて、現担当者のルールを理解、踏襲することに努めるようにします。ルールの見直しについては、じっさいに新担当者がそのルールで対応してみた上で考えるようにしてください(対応経験がない状態のままルールを考えるほうが危険です)。

またじっさいに対応する際に協力を仰ぐことになる関係部署(広報、開発、サポート等)についても顔合わせなどの機会を作り、調整する。

ルールのサンプルについては前回の記事に記載しています。

ツールの利用トレーニング【1-2日】

CoTweetなど現在使っているツールのアカウントを発行し、その使い方を学ぶ期間を設けます。
現担当者に強い不満がない限り、この段階での新しいツールの利用は検討しません。

個人的には担当者間でメモを残せるCoTweetはオススメです。

http://cotweet.com/

そのほかツイッターの公式検索、BackTweets、bettween、bit.ly、TwitterCounterについてもその使い方をレクチャーしてください。

http://search.twitter.com/

http://backtweets.com/

http://bettween.com/

http://bit.ly/

http://twittercounter.com/

イメージトレーニング(ロールプレイ)【3-5日】

前述のツールを使って自社ブランドに対する過去のツイートを検索し、自分ならどういうコメントをするか新担当者に考えてもらいます。じっさいに120文字程度(ツイッターの文字数は140文字ですが、リプライ先のアカウントなども含むので120文字で文章を考える)でコメントを書いてみるようにしてください。

その上で現担当者がじっさいにリプライしたコメントを見て比較してみます。それを繰り返して、イメージトレーニングをしましょう。なぜそのコメントだったか理解できない場合など、疑問点は都度確認することも忘れずに。
最新の発言が少ない場合は過去の発言でもかまいません。とにかくここでの経験が落ち着きに繋がると思っていてください。

ユーザーへの告知【1日】

ツイッター上で新担当者を紹介します。

例(現担当者):「○○です。今日から××がツイッター担当見習いとして登場します。不慣れな部分もあるかと思いますが本人はやる気満々ですので、ぜひ温かい目で見守ってやってくださいね。」

例(新担当者):「××です。これからよろしくお願いいたします。会社では△△を主な業務としています。これからがんばりますので、気付いた点はビシバシとご指導ください!」

公式アカウントの背景画像、プロフィールに担当者を公開している場合はそれも修正します。
以降、ユーザーから見ると担当者が複数いることになりますので、ツイートする際には必ず「○○です。」と名乗ってからコメントするようルールを追加します(従来から名乗るルールの場合はそのままでけっこうです)。

OJTその1【1-2週間】

インバウンド(リプライやDMで直接話しかけられるケース)の対応を新担当者に引き継ぎます。当面は現担当者が投稿前にチェックすることが望ましいですが、過去に似たようなケースがあった場合はノーチェックで新担当者がリプライしてもかまいません。少しずつノーチェックで対応できるパターンを増やしていきましょう。

サポートとの連携など、ツイッター上だけで解決しないケースもOJTの時点で体験しておくのが望ましいです。
おおよその問い合わせが出尽くしたタイミングで以降の対応を完全に引き継いで任せます(年に数回しか来ない問い合わせを待ち続ける必要はありません)。

OJTその2【1-2週間】

アクティブサポートをやっていない企業、また引き継ぎの方針で消極的に移行すると決めた場合はスキップしてかまいません)

アウトバウンド(社名やサービス名で検索して、こちらからリプライで話しかけるアクティブサポートのケース)についても同様に対応を引き継ぎます。

ほとんどのケースは利用者の感想なのでお礼を述べることが中心になります。ただし中にはサービスに関する質問や、製品の不満が書かれていることもあるので、都度相談しながら対応します。
新担当者のコメント文案が迷いなく作成できるようになったタイミングで以降の対応を任せます。

この時点で対応のすべてが引き継がれたことになります。

ユーザーの反応チェック

新担当者がコメントすることになってからのユーザーの反応をチェックします。
具体的にはフォロー数が急激に減っていないかをTwitterCounterで確認したり、日々の新担当者に言及したコメントの内容を精査して、ネガティブな反応がないかを調べる。

本来はOJTと平行して行なわれるべき。最終的な担当変更を判断するステップとして明記しておきます。

ユーザーへ告知して引き継ぎ完了♪

担当者の引き継ぎが完了したことと、今後は新担当者をメインに据えることをユーザーに伝えます。

例(現担当者):「○○です。長い間お世話になりました。これからは××がメイン担当となりますので、いままで同様によろしくお願いいたします。」

例(新担当者):「××です。今日からツイッターのメイン担当となりました。ご意見ご感想などはこれまで同様、気軽にリプライやDMを送ってくださいね。」

以降はオブザーバーとして関わることに留め、新担当者に任せるようにします。
不安に感じることも多々あると思いますが、基本的には相談があるまでは見守るようにしてください。
(そもそもこれまでの対応が正解だったかどうかもわからないのですから)

最後に

いまの段階では企業のソーシャルメディア活用はツイッターに限らず「始める」ことが最大のハードルになってると思います。
ただそれは少しずつクリアされてきています。そうなると今度は「続ける」ことがハードルになってくるわけですが、それは組織としてどうやって体制を維持するか、具体的には予算を確保するために効果の定量・定性レポートを作ることと、担当者の引き継ぎの問題をどうするかがポイントになってくると思います。

レポートについてはまだまだ試行錯誤なところがありますが、始める際と引き継ぐ際のトレーニングマニュアルについてはこの記事を参考にしてください。

うちの会社ではこんなふうにトレーニングしているという話もぜひ聞かせてください。

河野

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

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