ツイッターでクチコミは起こるのか
そもそもクチコミを意図的に起こすことは相当難しいので、ツイッターを使うかどうかで話がそう大きく変わることはないのですが、ここ最近、それこそかつての「Second Life」の時のように、ツイッター周辺のビジネスが盛り上がってきました。
たとえばこんなの。
- ソーシャルメディアを駆使したマーケティングソリューションを提供する新ユニット「オガワカズヒロ」:MarkeZine(マーケジン)
- Twitterをプロモーションに活かす – カヤックが新サービス発表 | ネット | マイコミジャーナル
こうしていろんな企業が参入して盛り上げることは悪いことではないんだけど、実態とかけ離れたうさんくさい連中が増えるのも悲しい事実としてあって、「いまツイッターで何ができるのか」を冷静に判断する必要があります。
そもそも、ツイッターでクチコミは起こるのでしょうか。
可能性がゼロとは言いませんが、日本国中がみんな知ってるような状況にはならないし、せいぜい数千人から数万人に認知されるのが精一杯でしょう。
現時点では極めて難しいと思います。その理由は、
- リーチの問題
- ログの流動性
の2点が挙げられます。以下に解説します。
リーチの問題? 重要なのは被follow数?
2009年7月現在、ツイッターの日本人ユーザー数は10万人前後だと推測されるのですが、国内でマーケティングを考える場合、ちょっとしたフリーペーパーでも10万部くらいは受け取ってもらえたりするので、特筆すべき規模ではありません。
(もちろん今後さらにツイッターユーザーは増える可能性がおおいにあります)
もっとも、日本人ユーザー数が100万人を超えたとしても、ツイッターの場合、自分の被follow数(followers)、つまり自分のつぶやきを読みたいと意思表示をしてくれるユーザーの数が重要なので、10人にしかfollowされてなければ話題が波及することはまずありません。
そもそもこれはツイッターに限った話ではありません。国内のブログ数は数百万はあるでしょうし、メールアドレスの発行数になるとその何倍もあるわけですが、実際にマーケティングで重要なのは自社のメルマガの購読数であり、自社ブログのRSS購読数なわけです。
ただこの点でツイッターが有利なのは、followするのはメルマガやRSSの購読よりも簡単だということですね。もちろんunfollow(followはずすこと)も簡単なので、SPAMとみなされればあっという間に被follow数が激減するでしょう。
「ツイッターをマーケティングに」と提案する会社が営業に来たら、まず「どうやって被follow数を増やしていけばいいですか?」とアドバイスを求めるのがいいと思います。そこに具体的なプランのない会社は避けたほうがいいでしょう。
ログの流動性? あっという間に過去の話に?
ツイッターには「お気に入り(favorites)」という機能があったり、あるいは「RT(ReTweet)」という自分の琴線に触れたつぶやきを広めようとする文化があります。
これはクチコミという現象を考えると、とても有効です。実際に「ちょっとした名言」をRTしているケースはよく見かけます。
また、Replyという簡易コメント機能(@smashmediaと指名してつぶやく)があるので、ツイッター上でちょっとした会話をすることも可能なのですが、このReply機能は相手の発言がどのつぶやきへのコメントなのかがわからないため、チャットのように同時刻にアクセスしていない限りは会話が成立しにくいですし、3人以上が会話に参加するのは難しいです。
そしてなにより、ツイッターの性質上、それぞれの利用者のページ(タイムライン)に表示されるのは一瞬でしかなく、どんどん新しいつぶやきによって、後ろに流されてしまいます。これは個々のユーザーがfollowする人数が増えれば増えるほど加速します。
このログの流動性の問題は、ツイッターのようにリアルタイム性が強いソーシャルメディアでは不可避で、もちろん速報を届ける際には向いているのですが、なかなか持続して何かのトピックを盛り上がるということには不向きです。
まとめ
こうした事実を考えると、現時点において、ツイッター上で完結させるマーケティングは成立しづらいと言えます。
たとえば、1万人以上の被followがいる著名人が何かをつぶやいて、そこにURLが記載されていれば、数千クリック(=トラフィック)を誘導することは可能でしょう。逆に言うと、いまできることはその程度だと思っておくべきです。
そして誘導先のページで本来の目的を達成するのが重要で、だからこそECサイトには向いています。Dellのケースは有名ですが、アウトレットのように小ロットを売り切りたい場合は、従来行なってきたメルマガやRSSでの告知に加えて、ツイッターを始めるのは(現場のスタッフにそれほど大きな負荷が増すわけでもないので)いいと思います。
それ以外のケースでは販促目的での利用は現実的ではありません。
その代わり、顧客を中心とした消費者とのコミュニケーション窓口として、そこに企業が参加するというのはツイッターも(ほかのソーシャルメディアと同様に)検討すべきです。
ぼくらはSecond Lifeのバカ騒ぎからきちんと学んでいかないといけません。
「フィールド・オブ・ドリームス」じゃあるまいし、何かを作っただけで人が集まってくるほど簡単なものではありません。
ツイッターのアカウントを作って、そこで何を発信するのか。
どうすれば継続できるのか、それこそ担当者が退職した場合に備えてどうバックアップ体制を作るのかも含めて、十分かつ慎重に検討すべきだと思います。
もちろんその際に、ソーシャルメディアでのマーケティング経験のある企業にアドバイスを求めるのもいいことですが、くれぐれもダマされないように気をつけてください。
ツイッターに関する海外レポートの翻訳記事も用意してありますので、参考にしてください。
この原稿はMarkeZineの記事として2009/7/27に掲載されました。
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