頭のブランディングと心のブランディング

何かを書くときは、ツイッターでつぶやける程度の文字数で要約できないとダメだなと思って、書きたいテーマを140文字以内でまとめてから書き始めるようにしようかなと。

今回はこれ。

頭のブランディングは認知、心のブランディングは支持。そして心のブランディングは消費を伴わないと築けない。Wed Jul 22 07:05:35 via web

ブランドの定義

そもそもブランドというのは、自分の家畜をよその家畜と区別するために焼き印を押したという話からきています。
実際、商標法で規定、保護されている「ブランド」も同様で、自社の商品やサービスを他社のものと見分けるために製造元が取り付ける商標やマーク、タグなどの付属物を指しています。

しかしマーケティングの世界で語られる「ブランド」あるいはそれを定着させる行為である「ブランディング」は、別の意味で使われることが多いです。
「マーケティング」同様、ブランドにも多種多様な定義があるとは思いますが、ぼくはブランド(ブランディング)についての定義を、

そのサービスなり商品なり企業名なりロゴマークなりが、消費者にとって特別な存在になること

と答えるようにしています。

頭のブランディングと心のブランディング

では、なんのためにブランディングするのでしょうか。それはもちろんそのほうが儲かるからです。

まったく知らないメーカーの、初めて見る商品を買うのは、みなさんもなかなか抵抗があるんじゃないでしょうか。
つまりブランドがしっかり築けていれば(ブランディングに成功していれば)、消費者は安心して、その商品を購入できるわけです。

そしてその信用や安心を築いていくためには、2種類のブランディングが存在します。
ひとつは頭のブランディング、もうひとつは心のブランディングです。

頭のブランディングは認知、心のブランディングは支持と言い換えることもできます。つまり前者は「知ってるブランド」であり、後者は「好きなブランド」ですね。

ブランド(ブランディング)を語る際に、この両者がごっちゃになっていることが多いのですが、きちんと分けるべきです。
ある商品なりサービスのマーケティングを考える際に、最初のハードルは認知を高めることです。知らない商品は絶対に売れません。
この「頭のブランディング」は広告やPRを通じて行なう必要があります。

もうひとつの「心のブランディング」は消費を伴わないと築けません。どれだけの広告を展開しても、CMにキムタクを起用しても、それだけでは支持が得られないのは当然のことです。
自分で買って、使ってみて(あるいは味わうなどの体験をしてみて)、そこで満足が得られた場合のみ、心のブランディングが成立します。

まとめると、売れるための条件としては認知、つまり頭のブランディングが成立していないとムリで、さらに売れ続けるためには支持、つまり心のブランディングが必要ということです。

広告業界など、一部で語られている「エンゲージメント(Engagement)」というのは、この心のブランディングに近いと思います。

これからのブランディング

さて、ソーシャルメディアが普及するにつれ、ブランディングにも大きな影響が出てきています。
それはブランドそのものを企業が消費者と「共創」するというケースです。

従来のブランディングは、企業が個別の消費者に対して行なうものでした。テレビCMを流すにしろ、商品を購入してもらい評価を受けるにしろ、それらはすべて分断された個々の消費者と企業の関係に過ぎませんでした。

しかし今、ソーシャルメディアでの対話を通じて、消費を伴って築いたブランディングのその先に、新しいブランディングのカタチが生まれつつあります。
それはもうただの消費者ではなく、単なる支持者以上の存在です。彼らはその企業の社員以上にそのブランドを愛し、エヴァンジェリストとして普及に努めます。企業と消費者が同化しつつある、と言ってもいいかもしれません。

こうしたブランディングを成立させることは簡単ではありません。ソーシャルメディア上に書き込まれる消費者の声を観察し、時にはそこに参加して会話を始める必要があります。自社のブログはソーシャルメディアの一部に過ぎません。消費者のブログ、mixiなどのSNS、ツイッターやYouTubeなどの増え続ける「会話の場」に参加していくには、コストもかかりますし、これまでの体制では正直難しいでしょう。

たとえば就業時間の問題。消費者が24時間365日、止まらずに会話をしているのに、企業側が9時から5時でしか対応しないのはあり得ません。そのためには勤務シフトの調整や残業代、さらには在宅勤務などについても整備していく必要があるでしょう。

たとえば評価の問題。ブログにコメントをつけることを仕事とする場合、上司はその担当者をどう評価すべきなのか。
たとえば離職リスクの問題。ソーシャルメディアでのブランディングには、担当者が個人として取り組む必要があります。そこで信頼を勝ち得た担当者が退職する場合、築いたブランドまで失うことは避けねばなりません。これは新しいリスクマネジメントです。

こうした課題は山積みではありますが、これからのブランディングを考える上で、ひとつずつクリアしていかねばならないのは事実です。
と同時に、理想型を常にイメージしながら、まずはできることから始めていくしかないのも事実なのです。どこから始めますか?

河野

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

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