マーケティング・コンセプトとは

マーケティング・コンセプトとは

マーケティング・コンセプトとは、言葉の通り、マーケティングを行う上での考え方のことです。
「マーケティング」という言葉が一般に定着する前から、当然のように企業の目標が「市場でよりたくさんの製品を販売すること」であり、そのために目標を掲げ、どのようなスタンスで市場に相対するかを決める必要があります。

具体的には「市場に対し創造的に適応するための目標」や「広告、宣伝、販売などあらゆるマーケティング活動の方向付け」といったものがマーケティング・コンセプトであり、マーケティング・コンセプトは時代とともに常に変化してきました。

それを図式化すると以下のようになります。

マーケティング・コンセプトの歴史

これまでに登場したマーケティング・コンセプトについて、ひとつずつ紹介します。

生産志向から販売志向へ

マーケティング・コンセプトの最初の段階は企業視点の考え方です。ここにはさらに3段階に分かれます。

生産志向

高度経済成長時代のように、需要に対して供給が不足している市場が未成熟な段階では、生産力そのものが価値であり、生産性の向上がマーケティング上の競争優位になります。つまりは「作れば売れる」という考え方です。
米国ではT型フォードが登場した1900年代からがこの時期にあたります。日本でも1960年代の「3C(クーラー・カラーテレビ・カー)」時代がこの時期に当てはまります。

製品志向

ある程度、供給が需要に追いついてくる段階に入ると、顧客は製品同士の比較を始めます。その結果、高性能な商品、高機能な商品を開発することが競争優位になります。「良い商品を作れば売れる」という考え方がこれにあたります。

販売志向

やがて供給が需要を上回ると、企業は過剰在庫を抱えるようになります。そのためこの段階では、いかに販売するかがマーケティング上の重要な課題となります。
じっさいには顧客のニーズやウォンツを無視してでも、強烈に売り込む企業が競争優位に立ちます。

言い換えれば、このへんまでは典型的な「プロダクトアウト」ですね。

顧客中心のマーケティングに

その後、企業の身勝手な考え方ではモノが売れなくなったため、顧客視点にシフトします。いまのぼくらから見ればこの転換は当然なのですが、裏を返せば「作れば売れる」という幸せな時代があったということですよね。

マーケティング志向(顧客志向)

販売志向は言ってみれば、需要のないところに売り込むわけですから早晩限界がやってきます。そこで顧客のニーズやウォンツを調査し、彼らが求める商品(いわゆる消費者ニーズを満たした商品)を生産・販売するという考え方が登場します。
米国では、1950年代以降がこれにあたります。日本でも50年代の後半からマーケティングという概念が本格的に導入され始めました。

それこそ「マーケティングを日本に持ち込んだのは電通(というか吉田秀雄)だ」という我田引水的なページもありますが、じっさいのところはさておき時代背景としてはこのあたりなのでしょう。

一般にマーケティングと理解されているのはこのマーケティング志向、顧客志向のことで、いわゆる「マーケットイン」の考え方です。

社会全体を視野に入れたマーケティングに

そしていまは企業と顧客の関係だけでなく、社会全体の視点が注目されています。

ソーシャル・マーケティング志向(社会公共志向)

消費者が物質的にある程度満たされると、消費が停滞します。また環境問題など社会問題が騒がれることによって消費そのものに罪悪感も生まれます。
そうした時代には、顧客の満足だけでなく、社会全体の利益や福祉の向上を考えて、長期的な視点に立ってマーケティングを行うことが評価されます。

現代の日本はまさにこの段階に突入しつつあると言えます。エコポイントはただのディスカウントなのでこれに当てはまることはありませんが、ただ日用品などの分野において「たいして値段が変わらないなら多少高くても環境に配慮した商品を買おう」という消費者の行動は現れ始めています。

これからは単に付加価値の高い商品というだけでなく、その商品とそれを購入する消費者の社会的な役割や関係をきちんと考えて提案することが企業のマーケティングにおいて重要になります。

マーケティング・コンセプトの現在と未来

ソーシャル・マーケティング志向、社会公共志向の次に、どんな新しいマーケティング・コンセプトがあるかはわかりません。ただ、おそらくより公共な考え方が追求されるのではないかと思います。
世界大戦でも起こって、ぼくらの欲求がマズローの欲求段階説でいう生命や安全の欲求まで落ちない限り、消費者の支持を得るためには社会的な欲求とリンクする必要があるでしょう。

そして当分はソーシャル・マーケティング志向の時代が続くでしょう。
これはソーシャルメディア(あるいはソーシャルメディアマーケティング)のような矮小化された意味ではなく、言葉通りの「社会」そのものについて視野に入れたマーケティング・コンセプトです。
もちろん現代社会にはインターネット上のコミュニケーションは不可欠なものですし、それによって救われる人たちや、生み出される価値がある点も無視できません。

インターネットはすでに社会の一部として組み込まれているという事実を踏まえた上で、しかしネットに寄りすぎてはいけません。ネットを日常的に使っていない人たちも世の中にはたくさんいます。
そして環境問題や人口問題、さらには不景気によって社会の閉塞感も生まれます。このような問題が山積する中で、企業が社会全体とどう関わっていくのかを、これからのマーケティングは考えていかなければならないのです。

河野

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

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2件のフィードバック

  1. 販売志向→マーケティング志向→ソーシャル・マーケティング志向と、消費者は着実に変化を遂げていますけど、ほとんどの企業はその変化についていけてなくて、ようやく顧客志向に取り掛かった企業がチラホラ、そして、ほとんどはまだ販売志向の状態であるような気がします。
    だからこそ、この時代売れないのは当然の結末とも言えるのですが・・。

    • そうですね、『エコ』の乱用なんかは「販売志向」とも言えますしね。
      「消費者はバカじゃない」ってことをもっと考えたらいいのにと思います。自分も消費者なんだから。

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