Amazonのワンクリック特許をAIDMAで考える
今回はAIDMAを使ってAmazonのワンクリック特許の何がすごいのかを解説したいと思います。
でもその前に、ECサイトにとって成功を示す指標とは何かを考えてみましょう。「もちろん売上」という方もいるでしょうし、「大事なのは利益だ」という方もいらっしゃると思います。どちらも正しいですし、事業のステージによっても重要視するべきポイントは若干ちがうでしょう。
ただ今回はマーケティングが追い求めるべき重要指標として、「購入率」を中心に考えたいと思います。なぜならば効率を高めれば、売上も利益も伸びる可能性が強まるからです。
EC業界では購入率をコンバージョンレートと呼んだりしていますが、英語か日本語かのちがいだけで意味はもちろん同じです。
購入率の求め方は簡単です。
購入率 = 購入者数 ÷ 来店者数
これをAIDMAで置き換えるとどうなるかわかりますか。そうです、以下のようになりますね。
購入率 = 行動した人数(Action) ÷ 認知した人数(Attention)
前回で歩留まりを少なくするためにAIDMAの各ステップを見直していく必要があると言いましたが、それを数値化したものが購入率というわけです。
じっさいには10人中10人が買って購入率100%のケースよりも、100人中50人が買ってくれる購入率50%のケースのほうが、売上の絶対額は大きくなりますし、ぼくも100%を目指すことが最優先だとは思っていません。だけど20%より40%のほうがいいし、50%よりも80%のほうが絶対にいいのも事実です。
では購入率はどういうときに「意図的に」上げることができるのでしょうか。
検索エンジン経由やアフィリエイト経由の購入率
検索エンジン経由の購入率は、バナー広告より高いです。これは通常の検索結果経由でも、AdWordsのようなリスティング広告経由でも同じです。
検索するということは、すでにその方にとって何かを求めているわけですから、認知段階を超えていることがほとんどです。さらに多くの場合はDesireに達しています。少なくともInterestの段階には達しているから、歩留まりがいいわけです。なぜならAIDMAのステップが少ないから。
またアフィリエイト経由の購入率もInterestかDesireから始まるので通常よりは高いです。特にショッピングカートにそのまま入れたりできる場合はもっと高くなります。
ただしこれは母数をどこにするかにもよります。「アフィリエイトをやっているブログを見た人」を母数にした場合、購入率はぐんと下がります。だけど「そのブログのアフィリエイトリンクをクリックした人」を母数にすると非常に高い数値になります。
ワンクリックの何がすごいのか
それではいよいよAmazonのワンクリックについてです。
AIDMAにおいて、各ステップはそれぞれハードルが高いのですが、ECにおいてはとりわけMemoryの歩留まりが大きいです。
ECにおいてのMemoryとは何だと思いますか。すぐに気づいた方はとてもセンスがいいです。そうです、ショッピングカート(バスケット)に入れることです。
カタログを見たり、検索したりして商品を特定し、それを欲しいと思って次に取る行動はショッピングカートに入れることですね。その後、決済をして商品を購入するわけですが、レッドシェリフという調査会社が出した過去のレポートによると、ショッピングカートに商品を入れたまま放棄する割合が67.1%という衝撃的な結果が発表されています。
もちろんこれは追跡調査できなかっただけで、同じ人が同じ商品を別のパソコンで購入していることも想定できるし、2003年のデータなので現在はもう少し改善されていると思います。ただそれでもぼく自身の感覚としても、半数近くはMemory → Actionで離脱している気がします。
Amazonのワンクリックがすごいのは、この非常に歩留まりの悪いMemoryを一気にすっ飛ばして購入完了にまで持っていくところにあります。
カートに入れるだけでなく、実際はActionにあたる配送先の選択や決済情報の入力なども短縮できるので、ここでの離脱を極限にまで少なくできます。だから特許になるわけです。
このように、インターネット上で評価されたり流行っているマーケティング手法には必ず論理的な理由があります。AIDMAは古典的で現代マーケティングには通用しないという声もありますが、ぼくはそうは思いません。マーケティング手法は時代や環境に応じて常に変化しますが、マーケティングの本質は普遍なのです。