ツイッター担当者のトレーニングプログラム(新規スタート編)

企業がソーシャルメディアに参加する場合、相応のトレーニングをしたほうがいいです。準備運動もなしに海に飛び込むのは危険ですし、コンパスも持たずに山に入るのは無謀であるように、ソーシャルメディア上でユーザーとやり取りを始める際も事前の準備は必要です。

勢いだけで進めるとまちがいなく失敗します。
オンラインコミュニティの性質や、それぞれのサービスの特徴についての理解に加え、自らがユーザーとして体験しないことにいは満足なコミュニケーションは取れません。
せっかく始めるんですから、より成功率が高まるようにきちんと準備をしましょう。

今回はツイッターを例に、企業が新規に公式アカウントを取得して始める場合のトレーニングプログラムのサンプルを作成しました。

(担当者引き継ぎのプログラムは次回をご覧ください)

ツイッター担当スタートプログラム(2010.8.31版)

まずはゼロから始める場合のトレーニングプログラムです。
この場合、いちばん大事なのは「焦らない」ことです。早くやりたい気持ちを抑えつつ、事前に想定できるトラブルにきちんと備えてからスタートしましょう。
ルールの整備はそのうちでいいやと思っても、トラブルは明日起こるかもしれないのです。すぐにでもユーザーと対話したい自分にブレーキをかけて、冷静に準備してください。

担当者の人選と当面の対応レベルについて

ツイッターのアカウントを作成して、公式アカウントとして活動を始めようという場合はおそらく担当者が決まっていると思います。
多くの企業では「言い出しっぺ」がやることになるケースが多いと思いますが、やりたい人がやれることはいいことだと思います。ただし一番やりたい人がやるというのは暴走と紙一重なので、はやる気持ちをコントロールすることは意識してください。

最初に決めることは「どのくらいの頻度で応対するのか」です。
ほとんどの場合は積極的にユーザーにコメントしていくアクティブサポートを望まれていると思いますが、他の業務との兼ね合いもあるでしょうから「同じ密度で継続できること」を前提に考えるようにしてください。最初だけがんばっても逆効果です。

理想は理想として掲げつつ、スタート当初はユーザーからのリプライやDMなど直接話しかけられた場合に確実に応対するというルールでもかまいません。続けられる条件を設定しましょう。
(といってもよほどの有名企業でもない限り、アカウントを作成しただけでは誰からもリプライされませんけどね)

ちなみにアクティブサポートについては「アクティブサポートの始め方」の記事も参考にしてください。

アカウントの設定

ツイッターアカウントの設定についても少し解説しておきます。ツイッターの場合、アカウント名やプロフィールなどいくつか設定項目がありますので、以下のようなポリシーで登録すればいいでしょう。

アカウント名 会社のアルファベット表記でいいでしょう。ドメインと揃えるのがいいと思います。ただしすでに取得されている場合もありますので、その際はjpをつけるとかofficialをつけるなどしましょう。
名称 会社名を正確に入れておけば十分です。
アイコン 会社のロゴ、キャラクターがいる場合はそのイラストでもかまいません。
現在地 本社の住所、もしくは担当者が本社勤務でない場合は担当者のオフィスの住所でけっこうです。
Web(URL) 会社の公式サイトのURLでいいです。
プロフィール これがいちばん重要です。どういう目的で立ち上げたアカウントなのか(何をしたいのか)、対応ポリシーや対応時間(曜日も)、さらには担当者の名前もここに書いておきましょう。
背景画像 会社のロゴをあしらったものでいいでしょう。USでは担当者の顔写真や個人のアカウントを載せる企業もありますが、そこまでやらなくてもかまいません(もちろんやってもいいです)。

具体的なプログラム

すでにツイッターを利用されてるケースがほとんどだと思いますが、その場合は適宜短縮してください。ここでは未経験だけどツイッターに参加したいという前提のトレーニングプログラムを用意しています。およそ1ヶ月半の期間を想定しています。

具体的な以降については以下の手順で行なうとよいでしょう。

個人でツイッターを体験【1ヶ月】

(すでに利用してる場合はスキップしてかまいません)

まずは個人でツイッターのアカウントを取得して利用する。あくまでも個人として利用すればいいので所属企業などを公開する必要はありません(ただし会社を代表する発言をしないことが前提)。

最低1ヶ月は利用して、その間に100回以上のツイート、さらに20人以上をフォローして日常的に使ってみましょう。
またパソコンだけでなく、ケータイでも利用してみる。CoTweet、HootSuite、TweetDeck、Echofonなど専用アプリでも利用してみましょう。

http://cotweet.com/

http://hootsuite.com/

http://www.tweetdeck.com/

http://www.echofon.com/

ここでのポイントはツイッターユーザーの気持ちを理解することです。やり取りされる会話からツイッターというコミュニティの「空気」を感じ取れるようになれれば大成功です。またリツイート(RT)やDMなど、ツイッターの仕組みや名称をきちんと理解しておくのも重要です。

いくつかの企業アカウントをフォローするのもいいでしょう。マネをする必要はありませんが、どのくらいの頻度で、どんな内容のツイートをしているのかを見ておくのは悪いことではありません。

対応ルールの文書化【1-2日】

どの程度フランクに話すのか、本名を名乗るのかなどを決めます。
ツイッターでのやり取りは非常に短い文章での会話になるため、一見ぶっきらぼうに見えることがあります。そのため「☆」や「♪」を意図的に使ってやわらかい表現にするのも有効だと思います。
また名前についても本名を名乗るのが不安な場合は「コウノ」のようにカタカナにしてもけっこうです。ただプレスリリースでは広報担当者は本名を書いているわけですから、ツイッター担当者だけカタカナにするのはオススメしません。

もう一点、フォローに関するポリシーはあらかじめ決めておいたほうがいいですね。誰彼かまわずフォローするのは嫌がられますから、パターンとして考えられるのは、次のようなものでしょうか。

  • リプライやDMを受け取ったらフォローする
  • こちらからユーザーに話しかけた際にフォローする
  • フォローしていただいたらフォローする(フォロー返し)
  • 自社ブランドについてツイートしているユーザーを見つけたらフォローする

“決め”の問題なのでどれがいいとかはないのですが、ぼくは「こちらからユーザーに話しかけた際にフォローする」というポリシーでやっていました。そうするとフォロー数がそのまま過去に対話を試みた人数になりますので担当者に励みになると思います。
もちろん「フォロー返し」をポリシーとしてもぜんぜんかまいません(たまにSPAMアカウントがフォローしてくるので、それは無視したほうがいいです)。

そしてこれらの決定事項を文書にまとめておきましょう。運用しながら随時修正を加えることはかまいません。ルールのサンプルについては後述します。

使用ツールの選定【1-2日】

ツイッターの対応に使用するツールを決定しましょう。
個人で使っているアプリがあるのならそれでもいいのですが、ユーザーとの過去のやり取りがきちんと履歴として保存できるものにしたほうがいいです。

個人的には履歴管理ができて、マルチユーザーに対応しているCoTweetがオススメです。

http://cotweet.com/

そのほかツイッターの公式検索、BackTweets、bettween、bit.ly、TwitterCounterあたりは利用しておくのがいいでしょう。bit.lyについてはアカウントも作成しておきましょう。

http://search.twitter.com/

http://backtweets.com/

http://bettween.com/

http://bit.ly/

http://twittercounter.com/

イメージトレーニング(ロールプレイ)【3-5日】

前述のツールを使って自社ブランドに対する過去のツイートを検索し、どういうコメントができるかを考える。また、じっさいに120文字程度(ツイッターの文字数は140文字ですが、リプライ先のアカウントなども含むので120文字で文章を考える)でコメントを書いてみることも有効なトレーニングです。

ツイッターの公式検索では直近数日分しかヒットしないので、Googleのリアルタイム検索を使うといいでしょう。

http://www.google.co.jp/realtime/

社内の関係部署への告知【1日】

社内の関係部署、とくに広報やサポート部門とは事前にしっかりと打ち合わせを行ない、想定される問い合わせのエスカレーションをお願いできるようにしておきましょう。
ツイッターで寄せられる質問は多岐にわたるため、とてもひとりで対応できません。また会社の公式見解と異なる返事をしてもいけません。広報に相談したり、サポートに対応を引き継いでもらえるように社内の協力体制を事前に作っておきましょう。

この打ち合わせはもう少し早いタイミングでもかまいません。その際に「いつから始めるか」についても伝えるようにしましょう。

いよいよスタート☆

公式アカウントでツイートを開始する。最初は自己紹介から。

例:「××です。今日から○○会社でもツイッターを始めます。みなさんの声にいままで以上に耳を傾けていきたいと思っておりますので、ご意見ご感想などお気軽にリプライやDMを送ってくださいね。」

トレーニングプログラムは以上です。
これだけの準備をしてもきっと想定外のトラブルは起こるでしょうが、ツイッター経験者でも2週間程度の時間を置いたのでかなり冷静に始められると思います。

あとは早く複数人で対応できるように社内の調整をしてください。
(ただし人を増やすには成果を証明する必要があるでしょうから、まずはユーザとの対応履歴を積み重ねてレポートをすることを意識してください)

ツイッター対応ルールのサンプル(2010.8.31版)

以下に対応ルールのサンプルを紹介します。こんな感じでシンプルに整理することを心がけてください。また日々のやり取りで気付いたことがあれば加筆修正をその都度行なってください。

ツイッター対応ルール

▽相手をきちんと認識する
ユーザーをひとり一人きちんと認識する
相手との過去のやり取りも踏まえてコメントする

▽コメントすべきか毎回考える
見つけたからといって必ずリプライする必要はない
スルーする勇気を持つ
特に初めて話しかける方については直近のツイートを読む
過去に話しかけて返事がなかったユーザーについては慎重に対応する
同じようなコメントでも必ず毎回考える
ただしインバウンドは必ず対応する

▽コピペはしない
同じような内容であっても必ずタイプする
(コピペでは気持ちまでコピーされない)

▽名乗る
担当者が複数人いる場合は、自分が誰なのか必ず名乗る

▽営業はしない
原則としてお客さまにお礼を伝えるために使っていることを忘れない
ただしお礼だけではなく、使いづらかった点など感想を聞くのはよい

▽お客さまの利益を考慮する
お客さまにとってベストな提案を心がける
場合によっては他店を案内しても、購入を思いとどまらせてもかまわない

▽対話をする
1回のコメントで解決しようと焦らない
長くなる場合は複数のリプライで回答してもよい
相手の主張が読み取れない場合は、こちらから質問する

▽誠意ある対応をする
こちらに非がある場合は率直に認め、感謝した上で対応方針について案内する
ツイッターでの説明が文字数的に難しい場合はメールやブログも併用する
他部署が勝手に行なったキャンペーンであっても、配送業者など自社以外の問題であっても、お客さまには会社の代表者として対応する

▽スピーディに対応する
四六時中監視する必要はないが(そう謳っていない限り)、ツイートを見つけた場合は速やかに対応する
とくにサポートが必要な場合は後回しにしない

▽ユーザーの邪魔をしない
ユーザーが誰かと会話しているところに割り込むのは注意する
基本的にはこういったケースはリプライを避けたほうがいいが、参加する場合も「横から失礼します」と丁寧に加わる

▽対応時間を明記する
ユーザーからの問い合わせに対応可能な曜日と時間帯をあらかじめ明記する
基本的にはコールセンターと同じでよい

▽フォローのルール
こちらから話しかけた際にフォローする
リプライだけでなく、アクティブサポートの場合も

引き継ぎのケース

次回は、すでに公式アカウントを開設している企業の担当者を引き継ぐ場合のトレーニングプログラムです。

河野

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

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