宣伝会議Internet Marketing & Creative Forum 2009 #3
宣伝会議Internet Marketing & Creative Forum 2009 のレポートをお届けします。
企業担当者が挑戦するWebマーケティングへの取り組み?口コミは自分でつくる?
●貝印株式会社
経営企画室マネージャー 郷司功 氏講演内容
貝印では「人を呼び込むのではなく担当者が訪問する」というコンセプトのもと、同社に関して書き込みのあるブログを担当者自らが探し出し、コメントを書き込むことで、製品への理解・ファンの育成を図る「カイタッチ・プロジェクト(KAI TOUCH Project!)」を展開する。社員自らが書き込みをするという、草の根的な活動ながら、企業の顔の見える取り組みとしてファン育成につながっているという同プロジェクトの狙いや展開方法について紹介していただきます。
講演者プロフィール
1971年福岡県生まれ。早稲田大学卒業後、94年、三菱商事に入社。主に自動車関 連事業を担当後、00年退職。インターネット関連、デザイン小物輸入関連のベンチャー2社を経て 06年9月、貝印に入社。08年4月より経営企画室に配属、現在に至る。
貝印ってどんな会社?
マーケティングに関する組織は以下の4つに分かれているのが現状。
1. | お客様相談室 | ||
2. | 経営企画 | → | ウェブまわり |
3. | MM本部 | → | 販促 |
4. | 広報室 | → | 広告・広報 |
マーケティング上の課題
- カミソリ事業のイメージが強すぎて、他の事業の認知が弱い
- カミソリ事業では競合G社とはテレビ等マス広告への広告予算に差がある
- カミソリ、素粧、家庭事業それぞれに別のコンペティターが存在する
- 企業体力としてもマス媒体への出稿は限界がある。だからこそウェブで何とかしたい
試行錯誤を繰り返した貝印ウェブ施策
(1)初期の勘違いな使い方
- 貝印製品を使った、お笑いコンテスト
- 女性芸人により「オモコロ女性芸人」
(2)「Club KAI(クラブ カイ)」の立ち上げ
- 商品モニター、メルマガ、イベントなどでダイレクトコミュニケーションを図る
- 相談室との連携を図った
(3)創業100周年記念イベント
- 貝印 創業100周年記念サイト 「あったかい」
- あったかくなる!元気がでることば
- 気軽に挑戦できる遊び心でつくる、あったかミッション
(4)カイタッチ・プロジェクト(KAI TOUCH Project!)
概要
ホームページやブログといった「オンラインのお客様の御宅」に貝印スタッフが訪問してコメントする。お客様とハイタッチならぬ「カイタッチ」をしにいく。
- 訪問者、約1万人/月間
- 平均PV、約1.5万/月間
- 初期費用、200万円
- 運用、2.5人
運用手順
- 1.検索でブログを検索
- 2.管理表シートに記載
- 3.ブログにコメントとする
- 4.公式サイトに掲載
消費者の家に貝印製品があることを気付いてもらうことが狙い。
戦略のポイント
- 呼び込むのではなく、自ら出向く
- コミュニケーションの効率化ではなく、温度(質)を狙う
- ユーザーにインセンティブを与えるのが目的ではなく、お客が喜ぶこと(訪問・コメント)をする
- 実社員であることを訴求しつつ、イメージキャラ設定
- ソーシャルメディアを「使う」のではなく、一員になる(参加する)
コミュニケーションの本質は、「人の温かみ」を醸成すること。
活動成果
- KAI TOUCH 検索数、Google 約90,800件、Yahoo! 約7,980,000件
- カイタッチ済エントリーがもうすぐ500件(2008年10月から始めて)
おおむねコメントに対しては好意的。貝印に対する親愛感を促進している。
クレームに対してもすぐに対応できている。
さらに社員のモチベーションも高まっている。
業績目標の組み込みも実行している。
KAI TOUCHの100ルール
一定の節度をもったお客様との距離感をつくるために策定。ウェブ上の手仕事をお客様に感じてもらう。
- 1.相手のブログ、プロフィールをよく読む
- 2.きちんと挨拶する
- 3.自社商品の売り込みをしない
- 4.ヒト(他社含む)を悪く言わない
- 5.知ったかぶりしない
- 100.嘘をつかない
今後の課題
- 各部門より担当者選出(社内承認を得た!)→全社員がお客とコミュニケーションするのが理想
- 効率悪い→Excel管理から専属の管理ツールを作成して負荷軽減
- KAI TOUCHの次の一手が必要になっていることは確か→考え中
貝印の「カイタッチ・プロジェクト(KAI TOUCH Project!)」については、以前に取材に伺っているので、そちらの記事もあわせてどうぞ。