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語るための傾聴(戦略)

ソーシャルメディアマーケティング関連の書籍やセミナーではよく「傾聴(戦略)」という言葉が使われています。顧客や消費者の声が可視化されているわけだから、まずはそれをしっかり読んで(耳を傾けて)いこうという指南です。

ぼくも基本的には異論はありません。まずは聞くという順序についてもその通りですし、これまでのマーケティングの大半が一方的にメガホンで怒鳴りしていたことを考えれば、会話の場であるソーシャルメディアでの振る舞いとして、企業がいままで以上に「聞くこと」を意識するのも大事なことです。

しかしそれは「話すこと」よりも「聞くこと」が大事だと言うことにはならないのです。

マーケティングは最終的には語るもの

消費者の話に耳を傾けているだけで売上がアップするなら簡単なのですが、そんな簡単な話はどこにもありません。ぼくらは最終的には自社の商品について消費者に語りかけ、存在を知らしめたり、態度を変容させた後に、彼らに「購入」という行動を起こしてもらわなければならないのです。

もちろんここでいう「語る」にはテレビCMを大量投下するとか、看板を立てるといった宣伝行為だけを指しているわけではありません。
商品そのもので語る、パッケージで語るといったことも含まれますし、もちろん企業担当者がブログやツイッターで魅力を伝えることも含んでいます。

なんのために聞くのか

そもそもなんのために聞くのでしょうか。
当然それは語るためです。消費者が何を求めているかを正しく把握して、彼らが求める内容(メッセージ)を、彼らが求めるタイミングで届けることがマーケティングの本来の目的だからです。
そのために耳を傾け、知ろうとするのです。

つまり「聞くこと」は常に手段にすぎないことを自覚しておくべきです。聞くことが目的になってしまうのは非常に危険です。
自分たちの会社や商品について賞賛することが書いてあればうれしいですし、けなされていたら落ち込んだりもするでしょう。しかし本当に大事なのはあなたが次に何を語るかです。

繰り返しますが、聞くことが大事じゃないという話ではありません。相手(この場合は消費者)の話も聞かずに一方的に話せば、避けられるに決まっています。
聞くことがスタートであることは間違いありませんし、そのためのツールを使うこともぼくは推奨します。なぜならツールを使うことで、あなたが本来やらなければならない「語る」ための時間が確保できるからです。

しかしすべては語るために、そこから逆算しての「傾聴」であることを正しく認識しておかなければなりません。

プッシュ7割、プル3割

感覚的には「話すこと」すなわち「プッシュ」が7割くらいの意識でちょうどいいと思います。
もちろん3入れて7返すみたいな単純な話ではありません。会話は一往復で終わることのほうが少ないですし、比率と同時に時系列で考えることが大事です。

たとえば1入れて1返して、また1入れて2返して、さらに1入れて4返す、みたいなやり取りがあって、結果的に7対3でプッシュのほうが多くを占めているというのがぼくのイメージです。

だんだんとこちらから話すことのほうが増えているのは、相手が求めていることが明確になっていくからです。
補足をすれば、この1とか2とか書いているのは単純に文字数や時間のことではありません(もちろんそれもあります)。むしろ距離の近さや主張の強さと言ったほうがいいかもしれません。ぼくらの人間関係も同じですが、最初は様子見をして世間話から入り、共通の趣味が見つかったら少し踏み込んだ会話をするといったように、お互いの関係性に応じて会話の内容は変わりますよね。これと同じことです。

いきなり自社の商品を強く薦めてくる企業は嫌われるに決まっています。まずは相手のことを知るために質問をするのが筋でしょう。
それを何度か繰り返すうちに、相手にとって有益な情報をもし自分が持ち合わせていれば薦めればいいのです。もし持ち合わせてないのであればそこで余計なことを言わないのも大事なことです。

消費者の声は神の声ではない

「傾聴(戦略)」の危険性は、まるで顧客の声が絶対的であるかのように語られる点です。

現代マーケティングにおいて「顧客の声」は無視できない存在ですし、それが部分的であれ可視化されているのがソーシャルメディアである以上、ここに書き込まれている声に耳を傾けないのはじつにもったいないことです。

しかしこうした声の言うがままに製品を開発したところでうまくいくことはまれでしょう。大半は失敗します。
「プロダクトアウト」よりも「マーケットイン」だという主張もあります。しかし「マーケットイン」は消費者の言いなりになることではありません。深層心理や潜在ニーズにまで踏み込んで、消費者が求めているものを汲み取り、それを作ることを意味しています。

大事なのは自分たちの商品について、あるいは企業理念について顧客に納得してもらうことです。共感してもらい、賛同を得なければなりません。
そのためにソーシャルメディア「も」使って語りかけ、伝えていかなければならないのです。傾聴はそのための前段であることを忘れないでください。

河野 について

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

語るための傾聴(戦略)」への2件のコメント

  1. @t_doumori
    2010.11.20

    これはNAGOYA GIGSが終わった後に河野さんから聴いた話のおさらい。まったく同意。語るために聴く。まさにそのとおりだと思います。「たとえば1入れて1返して、また1入れて2返して、さらに1入れて4返す、みたいなやり取りがあって、結果的に7対3でプッシュのほうが多くを占めているというのがぼくのイメージ」。ここが本当にわかりやすい。良い記事をありがとうございました。

    • smashmedia
      2010.11.20

      そうですね。あのとき話した内容をまとめてみました−。

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