接客業でもっとも重要とされるスキルは「お客さんを不快にするほど近寄らず、それでいて呼ばれる前に近づき応対する」ことです。
この「ほどよい距離感」を自然に振る舞える人と、そうじゃない人がいます。こういうことがいわゆる適性なのでしょう。

企業の代表者として消費者との関係構築を担当するコミュニティマネージャーに求められるスキルも同じです。
ただしソーシャルメディアマーケティングの事例の大半は海外のもので、そういった海外事例を参考にする場合は、その国民性のちがいをしっかり踏まえておかないと失敗することになります。

日本人にとっては過剰サービスかもしれない

たとえば少し前にブームになったコールド・ストーン・クリーマリーというアイスクリーム屋があります。この店はアイスを作りながら歌を唄うという奇抜なサービスで話題になったので覚えてる方も多いのではないでしょうか。しかし物珍しさでの集客には成功したものの、そのサービスでは顧客の支持を獲得するには至りませんでした。アイス自体はおいしいのでぼくは好きなんですけどね。
(2009年まで150店舗の出店計画を発表していたものの、現在の国内店舗数は35店舗にとどまっています)

このへんの「どこから過剰サービスになるのか」は微妙な問題で、メイド喫茶なども見方によっては奇抜かつ過剰なんですけど、一部の熱狂的顧客に受け入れられてるわけですしね。日本人だからオーバーな演出が受け入れられないという話ではありませんし。

もっとも「日本人」というくくりがおかしいのは事実です。歌を唄うアイスクリーム屋も、店員がメイドのコスプレをしたカフェも、それを支持する人もいれば嫌悪する人もいるだけのことです。
ただ傾向を見る際に国民性は重要な要素ですし、コミュニケーションにおける距離感を測る際に、週末にホームパーティをしたり、高校の卒業式にプロムが開かれる国と同じように考えるわけにはいかないのも事実でしょう。

ぼくがコミュニティマネージャーの役割や振る舞い方をきちんと日本向けにローカライズしないといけないと感じているのも、許容される範囲を捉え直す必要があると考えているからです。
(もちろんその上で自社向けにさらにカスタマイズが必要です)

フランクと感じるか、馴れ馴れしいと感じるか

ソーシャルメディア上での会話も同様です。正解がないのでマニュアル化することがとても難しいのですが、このへんの顧客との距離感をどのように測るかが成否の分かれ目となります。

距離感には言葉のチョイスも大きな影響を与えます。とくにツイッターの場合は文字数に制限があるため、簡潔に書こうとするあまりついついぶっきらぼうで冷たい印象を与えることがあります。
そのため企業内の担当者はできるだけ明るく親しみやすい印象を与えるために、「☆」や「♪」などの記号を使ったり、「!」などで少しオーバーに気持ちを表現することがひとつのテクニックとしてあるのですが、これも相手によっては近寄りすぎで馴れ馴れしいと受け取られるかもしれません。

コミュニティマネージャーやツイッターの担当者には、これから会話しようとしている相手の過去のツイートを読んだりして、どういった言葉を使えば嫌悪感を抱かれないかを判断するスキルが求められます。

ときには「話しかけない」ことが最良の選択となる場合もあります。じっさいショップで服を見てるときに話しかけられたくないことはありますよね。
でも試着したいとか、別のサイズを出してほしいときには呼ばなくても近づいてきてほしいわけで、これが消費者側の本音なのです。

たとえオンライン上であっても同じで、そういった消費者のニーズにどれだけ応えられるかが問われているのです。
ツイッターのように相手のタイムラインに割り込む場合は細心の注意が必要です。言ってみればツイッターで話しかけるのはショップの店員が接客するのと変わらないのです。

近すぎず遠すぎず、ひとり一人のユーザーと向き合って「ほどよい距離」でやり取りをする、オンライン上の接客スキルがこれから求められるのでしょうね。

[追記]
こちらの記事も参考に。