「“次世代IMC戦略活用の方程式”セミナー」レポート
7/1に行なわれた、宣伝会議主催「次世代IMC戦略活用の方程式」セミナーのレポートを寄稿していただきましたので、ここに掲載します。
セミナー概要
タイトル:次世代IMC戦略(統合マーケティングコミュニケーション)活用の方程式 (※「脱広告 超PR」出版記念セミナー)
開催日時:2009年7月1日(火)13:30-17:30
スピーカー:株式会社インテグレート CEO藤田氏、COO山田氏など
会場:フロラシオン青山
主催:株式会社宣伝会議
第1部「次世代IMC戦略のプラットフォーム“情報クリエイティブ”とは」
スピーカー:藤田 康人 株式会社インテグレート 代表取締役CEO
要約
- 「情報クリエイティブ」というPR発想を持つことが大切(脱・広告枠ありきの発想)
- ユーザーの「情報バリア」を破り、広告・情報を受け入れやすい状況を作るためには、中立・公正な第3者からの情報を提供することが必要
- 「情報ファイル」はメディアや広告表現に応用できるくらいに、徹底的に造りこむ
- マスメディアで話題をつくり、CGMを反響板として用いる流れ(連鎖型IMC)が有効
講演録
今日のキーワードは4つ。
「脱・広告(過度の広告依存からの脱却)」
「超PR(PRブームへの警鐘)」
「情報クリエイティブ」
「連鎖型IMC」
「次世代IMC」とは?
- 情報過多になり、消費者は飽和状態になっている=広告が効かない
- 情報バリアをはっている状態なので、中立・公正な第3者からの情報を提供することによって、興味喚起・広告が効く状態に持っていくことが必要
「情報クリエイティブ」とは?
事実に基づいたPR発想の体系的かつ再現性の高い情報源をつくり、消費者のパーセプションを作ること
「情報クリエイティブ」における3つのインサイト
ソーシャルインサイト:専門家
ターゲットインサイト:消費者
メディアインサイト:媒体
「情報ファイル」(情報クリエイティブのアウトプット)の作成
- 徹底的に調査をかけ、ファクト・エビデンス、専門家のコメントなどを盛り込む
- あらかじめ露出したいメディアにヒアリングし、情報ファイルの内容をそのまま記事にできるレベルまで編集する(記事の内容をコントロールできる)
事例1:クノール「1日分の緑黄色野菜スープ」
- 野菜にうるさいイトーヨーカドーのトマト売り場に陳列することでホンモノ感を演出(※流通は、マスメディアの取材が入ることをメリットと感じる)
- 「ぐるなび」とコラボして「緑黄色野菜スープ」がブームであるように見せる
- 日経新聞で取り上げられた記事を、ワイドショーの新聞記事コーナーに露出させる→本来のターゲット層である若い女性にアプローチ
事例2:東芝「サイクロンクリーナー クワイエ」
- 「夜カジ族」という言葉をキーに、静音家電市場にフォーカスを当てる
- 直接的に製品のプロモーションをするのではなく、カテゴリー(静音家電)とライフスタイル(夜に家事をする)のプロモーションを行った
- 全国紙への記事掲載を基点に、情報の連鎖を作った
その他事例:
東芝「食エコ」冷蔵庫
森永製菓「逆チョコ」
ウェブを基点に何かムーブメントを作るのは無理。始まりはマスメディアからで、ウェブは反響板として捉える。その反響が大きければ大きいほど良い。
広告クリエイティブ × 情報クリエイティブ = 次世代IMCプランニング
(情緒をくすぐる) (情報バリアを突破する)
第2部「WEBプロモーション3.0=次世代IMC戦略におけるWEB活用の方程式」
スピーカー:叶 修吾 株式会社3i 取締役COO、高見 俊介 株式会社 3i シニアプランナー
講演録
WEBプロモーション3.0とは?
- 非ブランドサイト(ブランドサイトではないPRコンテンツのストックサイト)
- コンテンツネットワーク・SPO(サテライトページ最適化)
WEB PR3.0とは?
情報クリエイティブされたPRコンテンツをベースに、メディアの編集枠内へ入っていくという発想。
事例:Baby Foot「足裏ずるむけコンテスト」
- 足裏の角質はがし・フットケア商品のwebプロモーション
- クチコミをポータルサイトに集積し、「みんなの意見は案外正しい」雰囲気をつくる
第3部「脱広告・超PR=情報を伝播させる仕組みづくり『連鎖型IMC』の発想と方法論」
スピーカー:山田まさる 株式会社インテグレートCOO、株式会社コムデックス代表取締役社長
要約
- PRの構造化による再現性の確保が重要
- PRは露出よりもメッセージが重要。メッセージをつくるとき、「+nの発想」(第3者の意見)があることが重要
- 情報の連鎖を作る、CGMに反響させるようにする
- PRの役割は、ユーザーが広告を受け入れられる状態にすることと、情報連鎖・うねりの中での議題設定機能
講演録
PRというと「パブリシティ(露出)」のイメージが強いが、メッセージに重点を置くべき。
PRの構造化はなぜ必要なのか?
- 知見を溜め、安定したワークフローをつくることで、安定的にコミュニケーションを回していく仕組みを作る(「PR=不安定・コントロールしずらい」からの脱却)
- 構造化により再現性を高める
調査のアングル
- ヨノナカゴト(パブリックインサイトの抽出)
- ワタクシゴト(パーソナルインサイトの抽出)
事例:森永製菓「ホットケーキミックス」
- 脳トレの川島教授との共同研究で「親子で料理するとストレス解消になる」と実証
- 9月9日を「親子でcook(くっく)の日」に認定させる
- 西村知美に実の子供と一緒にホットケーキを作ってもらうプレスイベントを実施
- 小麦価格高騰による値上げの直前に実施。アップトレンドの維持に貢献
- 流通の高い評価を得る(テレビが取材に来るから)
「局面(状況)」を作らないとメディアは取材に来ない
情報の連鎖をつくる=反響マネジメント
- CGMはマスメディアの反響板。コントロールできない(いまは、反響の大きさが顕在化したことがすごい)
- ガイドサイトで取り上げられることを目標に情報の流れを作る(費用対効果高い)
マスメディア | ウェブ | CGM | |
---|---|---|---|
話題作り | マスコミ | ポータルサイト | ブログ |
対話 | マスコミ | ガイドサイト | 1 to 1 |
オススメ | 店頭 | EC・販売サイト | 1 to 1 |
PRの役割
- ユーザーが広告を受け入れられる状態にすること(情報バリアをはずすこと)
- 情報連鎖・うねりの中での議題設定機能(=ジャーナリズム)
所感
- 「情報クリエイティブ」の考え方は、参考になる。
- インテグレートのメディアリレーションの強さが成功の秘訣ではないか?(汎用性は低い?)
- PRは、それがPRであることがバレた瞬間に冷めると感じた。結果を出している(売上に貢献している)部分は評価できるが、若干「違法でなければ何でもやる」というスタンスに見える。
- モラルの部分に疑問。(広告主のリスクが大きくないか?)
河野コメント
ぼくもこのセミナーに参加していたのですが、構造化というわりには特殊なケースが多くて、汎用性は低いように感じました。ただ、彼らが「情報ファイル」と呼んでいる、ファクトシート(消費者や識者によるコメントや、公開されているデータなどを整理した資料)は非常に価値が高く、これを元にさまざまな展開を考えていくというプロセスは汎用性も高く、参考になると思う。