子供向け実験教室における保護者とのコミュニケーション事例(前編)

今回は、私がマーケティングを担当している子供向け実験教室の顧客とのコミュニケーション事例についてお話したいと思います。

このブランドにとって「顧客」は二人存在します。生徒と、その保護者です。
生徒の満足が得られなくても、保護者の満足が得られなくても、最終的に退会になり、売上減少につながります。
だからこそ、生徒が1日でも長く通っていただくこと、保護者が生徒を1日でも長く通わせたいと思って頂くことが重要です。
今回は、保護者とのコミュニケーションにフォーカスして事例をお伝えしていきたいと思います。

まずは現状把握から

顧客とのコミュニケーション戦略を考えるにあたって、まず必要なことは現状把握。
その中でも、関係者の中で課題が何かをすりあわせることと、コミュニケーションをする対象者の現状把握は必須です。

【1】顧客とのコミュニケーションの課題を明確にする

まず、事業責任者にヒアリングをして課題を浮き彫りにしていきました。いくつかヒアリングしていくうちに、生徒が授業を受講してきて教材をもってかえってきて「楽しかった」と保護者に報告するそうですが、それがどういったことに役立って、どういった内容かがいまいちよく保護者は理解できないという実態があることがわかりました。
それと同時に、保護者の方からすると、授業でどういうことをやっているかも実際にわかりにくいということでした。
ヒアリングを通じて、「生徒は満足していても、保護者の方にはそれが伝わるのが難しい」という課題を見つけることができました。

そこで私達は、以下のようなコミュニケーション課題を定めました。

(1)授業内容は生徒からだけでは伝わりにくいので、教室スタッフから保護者に授業内容やその意義を直接伝える場を設ける。
実際に保護者を集めて説明する会は設けてるが頻度が低いので、コミュニケーション頻度を高くして伝えていく機会をつくる。

(2)講義の内容を知ってもらい、保護者の方とお子様のコミュニケーションのキッカケにして、保護者がお子様を「通わせていてよかった」と思ってもらう。

(3)連絡事項が、お子様に渡しただけでは伝わらないことが過去にあったので、保護者の方にも直接伝える機会を設ける。

【2】保護者アンケートを実施

具体的な施策に落とし込んでいく時に、コミュニケーションする相手のインターネット利用状況やメディア利用状況を知る必要があります。この時点では、インターネットやメルマガを活用して課題を解決できそうだ、という仮説があったのでインターネットやメールの利用についてアンケートは絞りました。

2009年11月に実施した保護者アンケート結果は、以下のようになりました(一部抜粋) ※サンプル数は約500名(全保護者の8割が回答)

「パソコンを持っているが、ほとんど利用しない」という人が20%となるなど、結構使わない人が多かったです。
データを見る限り、そもそもインターネットを日常的に利用してない、というのは容易に予測がつきます。

パソコンのインターネットに関しても、「ほぼ毎日」の人が約5割いますが、「月に2から3回」という、あまり使っていない方もいます。
このあたりはしっかりおさえておかないといけないと思いました。

さらに、どういったインターネットサイトを利用しているかもアンケートで聞いてみました。
主婦が利用しているというウィメンズパークやmixiを、あまり利用していないというのもわかりました。
ネットショッピングの楽天でさえ12%でした。
保護者の方達は、一般的な「主婦」に該当すると思っていましたが、想定とは違う結果になりました。
細かいところかもしれませんが、私達自身の顧客をみないと判断を誤るということを痛感することにもなりました。

コミュニケーションツールの選択

コミュニケーションツールを選択する上で、大事なことは選択したツールが課題の最適解であるかどうかと、コミュニケーションの対象者にとって負担がないことだと思います。

パブ目的で、最新のコミュニケーションツールに飛びつく方法を否定はしませんが、コミュニケーションをする相手は基本的には自分たちの顧客です。
私達にとっては保護者です。
保護者にとって負担がないコミュニケーションツールを選択することはとても重要だと思います。

結果的に、コミュニケーションツールに関しては、「メールマガジン」を選択しました。
メルマガ配信ツールは会社として用意されているので、ほぼ無料で使えることも重要な判断軸の一つでした。
保護者にとって負担がないかどうかは、アンケートからも問題ないと判断できました。
ただし、パソコンでのメールをほぼ毎日利用しているわけではないので、携帯とパソコンの両方を用意してあげることは大前提だということもアンケートから判断しました。

その一方で、私達にはすでに存在していたスタッフブログのコンテンツを変えて対応することも可能でした。
しかし、アンケート結果をインターネット利用状況が決して高いとはいえないので、「ブログを見てください」と慣れないことを保護者の方に依頼してしまうと結局は負担につながると思いました。

このように、課題に対する最適解を選択するには、コミュニケーションをとりたい顧客にとって負担がないかを判断できる資料があることと、あとは社内のシステムリソースとして何を使えば一番コストパフォーマンスが良いかという二つだけでも十分判断できるかと思います。こういったことがないと、何をもって判断するか、にまずは迷ってしまうかと思います。

更に、コンテンツ内容は前述した課題(1)から(3)を解決できるように、以下のように設定しました。

■授業概要と、この授業を通じて何を学んでもらいたいかを書く。
また、保護者の方にはお子様にどういう風に授業後のフォローをしてもらったり、会話してもらえばいいかを盛り込む。

■どのような授業をやったかは、写真は重要なのでブログを活用して授業報告をする。

■配信は月2回(授業が月2回のためと、新しい業務になるので最低限の稼働にしました)。

■長期休暇等の連絡事項、保護者の方にも直接伝える機会を設ける。

■パソコンと携帯のメルマガを両方作成し、どちらを受信するか選択できる。

そもそも、メールマガジンを希望しない方もいるので入会段階で希望を伺う。

コミュニケーション設計をする上で重要なこと

私が、顧客とコミュニケーション設計する上で大事なことは、以下の二つにつきるかと思います。

  1. コミュニケーションの課題を明確にする
  2. コミュニケーションツールの選択は、コミュニケーションの対象者にとって負担がないツールを選択する→「負担がない」ことを確信させるために、アンケート等をとって判断材料となる資料を予め作成する

当たり前といえば、当たり前です。
しかし、当たり前のことをいかに愚直にできるかが大事だと思っています。
特に、コミュニケーションツールの選択は、毎月定期的に通って頂いている顧客だからこそしっかり確認できることです。
アンケートの趣旨も、きちんと伝えれば協力してくれます。実際のところ、私達のアンケート回収率は毎回8割を超えます。
既存顧客だからこそ、負担がないコミュニケーション方法で実行していくことが重要かと思います。

後半は、半年間継続した後の保護者からのメルマガ評価について述べていきます。
実際にどんな点が評価されて、どんな不満があったかを書いて、そのあとの改善点はどうだったかまで述べていきます。

河野コメント

子ども向けビジネスにおいての顧客は子どもだけじゃなく、その親も考えなければならないというのはこの手のビジネスをされている方であれば共通の話なんでしょうね。
おもちゃにしても買うのはいわゆる「6ポケット」ですし、とくに母親が教育や安全性の観点からストップをかけることが多いので、誰がディシジョンメーカーかを見極めたコミュニケーションが必要です。

じっさいこのあたりはクルマの購入でも同じことが言えて、必ずしもお父さんがディシジョンメーカーではなく、奥さんや子どもがディシジョンメーカーになることも多々あります。自社の商品を使う人は誰で、購入の決定権を握っている人(必ずしもお金を出す人ではありません)は誰かを意識することはとても大事なことだと思います。

あと今回の話では最終的にメルマガをコミュニケーションツールとして選択されたようですが、相手のITリテラシーにあわせるというのも忘れてはならないポイントですね。
それを明らかにするための顧客向けアンケートという点も正しいアプローチだなと思って読みました。

はせれい

マーケター+ジャズシンガー

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2件のフィードバック

  1. すごく参考になりました。またインターネットを主に活用した子持ち層へのマーケティングについて、ぼくは体感からかなり懐疑的でしたが、それを支える一つの結果を知れて、興味深かったです。

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