最愛を目指せ
厳しい世の中ですが、今の時代にモノやサービスが売れるには3つの条件があります。
それは「いちばん安い」か、「いちばん性能がいい」か、「いちばん愛されてる」かの3つです。このどれかしかないのです。つまり、最安・最高・最愛のどれかということです。
最高か最安が支持された時代
かつては最高のモノが売れました。より良い品質、さらなる高機能が差別化ポイントであった時代がたしかにありました。そして近年は価格(最安)です。マーケティングの4Pというのはすでに(ECの普及などの影響もあり)バランスが崩れていて、圧倒的に価格が選択理由になっています。
そしていま、格安ジーンズに代表されるように、それなりの品質の商品がいずれも低価格で提供されるようになってくると、価格さえもが差別化要因になり得ず、どこで買うのか――つまりショップやブランドへの信頼や愛着――が最重要項目になっていくと思われます。
もちろんこれからも最高や最安は選ばれ続けます。企業が考えなければならないのは、最愛を含めたどれを自社の戦略として選ぶのかということです。
最安を狙うのか、最高を狙うのか、それとも最愛を狙うのか。ここであなたの会社が進むべきはどの道だと思いますか?
まず最安を狙う場合、相当な覚悟が必要です。大手企業や海外資本との値下げ競争、商材によってはPB(プライベートブランド)などとも競う場合があるでしょう。メーカーにとっても、小売りにとっても、なかなかに険しい道です。
このプランでは薄利多売が前提になりますので、文字通り「多売」を現実のものにしなければなりません。少子化が進み、人口減少が予想される国内市場での実現は非常に厳しいです。
次に最高を狙う場合、これは可能な限りがんばる価値がある選択肢です。しかし多くの企業にとって、最高の商品、最高のサービスを実現するための投資がかなりの負担になります。最高は常にひとつであることを考えると投資を回収できるのかがかなり不安です。最高の商品を作ったけれど大赤字というのでは話になりません。
また昔とちがって趣味嗜好はどんどん多様化しているので、顧客にとっての最高の商品は人によってちがうのですが、多様化と細分化が進めば市場規模が小さくなるわけで、このあたりもよほどの大企業か、それを狙って創業したベンチャーでもない限り、選びづらいなと思います。
最愛を目指せ
結論ありきな展開ですが、ぼくは多くの企業にとって「最愛」こそが会社を生き延びさせる唯一の道だと思っています。そしてその実行手段としてのITやインターネットやソーシャルメディアは大きな可能性を秘めているとも思っています。
ではどうすれば最愛のブランドを築けるのか。
どこで買っても似たような商品、同程度の価格となったときに、あそこで買いたい・あのブランドがいいと思っていただくには「特別な体験」を提供しなければなりません。
感動は(不満も)事前期待とのギャップで生まれるものですから、最初に取り組むべきはお客さまひとりひとりの事前期待を知ることです。
そのためにITを駆使してデータベースを構築し、顧客の声を一元管理していくことは今後ますます重要になっていくでしょう。もちろん収集するだけでなく、それをサービスや商品に反映させなければなりません。
電話、メールだけでなく、ブログやTwitterなどのソーシャルメディア上で語られている顧客の声に耳を傾け、自社のサービスを常にブラッシュアップし続ける企業が顧客の支持を獲得できるのです。さらには顧客ごとにカスタマイズできるとベストですね。
(もちろんそこには「聞くべき不満」もあれば「無視すべき不満」もあることをお忘れなきよう)
かつては「ブランドロイヤリティ」のような言葉で語られることもありましたが、もはやこれは取り組んだほうがいい程度の話ではなく、真剣に取り組まないと淘汰されてしまうほど重要性が増していると感じています。
届いた情報を整理してメールを送りつけるだけの旧世代のCRMではなく、インターネット上に散らばる情報を自ら収集し、それを元にサービスを改善し商品を改良する、さらにはそのことを顧客ひとり一人に伝え、そのやり取りのすべてを公開する、そんな次世代CRMとも言うべき活動が企業の生命線になるのです。
最高か最安か、それとも最愛を目指すのか、あなたはどれを選びますか?
[追記]
「最愛戦略」をテーマに講演した際のスライドを添付します。