実施前ではなく、実験期間にKPIとROIを考える

アクティブサポートについての取材でもそうなんですけど、メディアの取材では必ず「どのようなKPIを定めてますか?」「効果測定はどうされてますか?」と聞かれます。じつは他社に先駆けて実践するような企業は具体的なKPIを定めてなかったり、効果測定も当面は意識せずにはじめることが少なくありません。

これにはいくつかの理由があります。
まずは「それをやるべきだと思ったから」という強い意志があるからなんですけど、もちろんそんな情緒的な話だけではなくて、新しい取り組みをする場合は「なにがKPIとして適切か」がわからないからです。机上の空論をつづけても意味がないと判断したら、まずは実験的にやってみて、そこで起こる変化を踏まえてから、あらためてKPIについて考えるのです。

また、こうした実験期間では効果測定自体がコストなのでやりません。企業によってしきい値はちがうでしょうが、実施するコストが一定額以下の場合は効果測定をしないほうがROIだけで見れば良かったりします。
そもそもリターンを正確に測るにはアクセス解析やユーザー登録フォームの設計を変える必要があるのですが、じっさいにどうすれば該当者を特定できるのかを見極めるためにも、しばらくやってみないとわからないのです。

もちろん長期的に見ればROIを測るべきですし、それを元に撤退基準も定めておくべきですが、少なくともはじめるための条件にはなっていません。
試行錯誤はやってみることが大事です。会議室だけで答えが出ない場合、小規模でいいのでまずはやってみて、その経験やそこで得られた結果を元に判断することをオススメします。

実験期間に意識すること

実験期間では以下のような点について意識しながら取り組むといいでしょう。

  • それをやるためのコストは毎月いくら必要か
  • それをやったことで明らかなプラスの影響はあるか
  • それをやったことで明らかなマイナスの影響はあるか
  • それをやりつづけるコストはどの数字に比例するか(売上? 顧客数?)

もちろんこれらの数字は判断材料でしかありません。マーケティング施策の中にはROIを測りづらいものもあれば、KPIを定めづらいものも多々あります。
明らかなマイナスがあるとか、コストがまったく見合わない場合はともかく、そうでない場合は長期的な貢献の可能性も評価して――ここは想像や直感に頼らざるを得ませんが――判断することになるわけですが、だからこそ経営者が判断しやすいように(さらにいうと覚悟を持って取り組めるように)できるだけ情報を収集したいものですね。

河野

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

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