ソーシャルメディアとリサーチのコラボ

台頭するソーシャルメディア

消費者を導き、会話をリードしているのは、もはやマーケターではない
(『グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略』より)

みなさん、こんにちは。ビデオリサーチインタラクティブの深田です。

ツイッターや、ブログなどのソーシャルメディア上には数多くの消費者が日常の出来事や思った事を書き綴っています。
ビデオリサーチインタラクティブのPC-Webの視聴率データ(WebReport)でも、ポータルサイト(例:Yahooなど)と、CGM(例:ミクシィなど)のWeb全体における利用滞在時間シェアを比較した場合、ポータルサイトが2008年7月には28%だったものが、2010年7月には26%と若干減少しているのに対して、CGM(≒ソーシャル)系シェアは、2008年7月で12%だったものが、2010年7月に16%へとシェアを拡大しており、これがモバイル(携帯Web視聴率=M3 for i-mode)ではポータルサイトとCGMサイトでは、そのシェアが逆転しており、その差は約5倍となっています。

確かに、ソーシャルメディアの利用は、この3?4年で、消費者の生活にも大きな変化をもたらしていると言えます。

かくゆう私も、先日電気炊飯器を購入するのに、価格コムの評判をチェックして自分が買おうとしている商品の評価や満足度が高いのか、又は掲示板などに書き込みに「不満」や「欠陥」などがないかなど、色々と調べてみて、購入後の「ああっ!やっぱり、これにして良かった!感」を高める努力をしていました。

ツイッターでも、サッカー日本代表が南アフリカW杯で決勝リーグに進出した際などは、この気持ちを同じく共有したいと思い、ツイッター上でどんなことになっているか、チェックして、「おおっー日本中で気持ちが一つになっているなぁ?」感動したものです。(お祭り気分を共有したい!が実現できました。)

大部分はサイレントマジョリティー

しかし、よくよく思い起こせば、それらソーシャルメディア(CGM)の書き込みを読んだり、チェックしたりしますが、果たして自分が自らそこに参加(=書き込み)したことがあっただろうか・・・。
実際、こういった職業柄、どんなものかとブログを書いてみたものの、特に書き込むこともなく3日間ともランチがどうだったとか、こうだったとかで終わっていた経験があります。

ある調査では、ツイッターに定期的に書き込こんでいる(つぶやいている)人は、全体の1割弱との結果報告もあり、利用者の大部分が私みたいなフォロワーだったりするわけです。(≒サイレントマジョリティー≒物言わぬ多数派)

そういった見方でみると、確かに、ツイッターでフォロワー数が多いのは、評論家や専門家などの著名人が多いように見受けられます。
同じく、ブログにおいても芸能人ブログは、今や芸能人の結婚報告の場にもなっており、広く世間でも認知されているところです。

そこで、調査会社に勤め既に12年。数多くの調査を実施してきた者から、このソーシャルメディアの隆盛を見ていて思うのは、「皆さん、声の大きさに左右されすぎてはいませんか?」ということです。

5段階評価と日本人気質

フィールド調査、電話調査、郵送調査、PCインターネット調査、モバイルインターネット調査などの色々な調査を経験して思ったことは、日本人の気質というか王道路線といいますか…皆さん、調査で5段階評価というのをご覧になってことはありませんか?
その5段階(5=とても、4=まあ、3=どちらでもない、2=あまり、1=全く)というように、その項目についての回答者の尺度について答えてもらう設問です。
過去の経験上、極端な設問でなければ、大抵は真ん中の4、3、2に8?9割が集中して、両極の5、1には1?2割の回答結果になります。
※設問内容が客観的事情を答えさせるような設問は除きます。あくまで意識などを問う場合です。「日本の首都は東京だと思いますか?」などは事実なので除きます。

これは、先に述べたツイッターの発言数とフォロワーの関係と同じような関係であると言えないでしょうか?(周囲の反応・意見を気にしたり、団体行動が比較的好きだったりと…)
もちろん、昨今の若い人達は、昔の日本人とは違い価値観が多様化し、個性が強くなっているとは思いますが、日本人の気質というか本質は、それほど変わらないはずで、全体の8?9割程度の意見(考え)を企業は理解して商品・サービス開発やニーズを拾い集めて行くことも大切なことではないでしょうか。

話を戻しますが、現在のソーシャルメディア(CGM)の隆盛に伴い、マーケティングデータとして、そこからの発言を分析・解読するツールが多く出回っていますが、そのデータだけで世間を捉えてしまうと、大きな勘違いをしてしまうことも十分に注意して、そのデータを使うことが大切なのではないでしょうか。
※もちろん、企業のターゲットが、その突端(または底辺)の突出した1割程度向けなら、不要かと思いますが…(例:広告業界向け◯◯サービスとか)

市場調査も重要です

そこで、調査会社の人間から一言…マーケティングデータでは、極端な意見(5=とても、1=全く)が集中するソーシャルメディアデータだけではなく、世間の大多数の意見(サイレントマジョリティ、物言わぬ多数派)も把握するために、市場調査も重要ですよ、ということです。
何事も、一歩引いて全体像を捉えることが大切ですよね。

まあ、しかしその1割の声大きい消費者は、声の大きい分、影響力もあるので…。

やらなきゃいけない、とか脅迫概念をついて、物事を見誤るようなことがないように、市場調査も大切ですよっていう内容でした。(宣伝ぽいですね)

ではでは。

河野コメント

調査会社に勤めている立場上、宣伝にならないように配慮しながら書いていただいたのですが、ぼくが寄稿をお願いしました。というのもこの話は深田さんの講演で聞いていたのですが、「みんなに知ってほしい」と思ったからです。

先日のデプスインタビューの記事もそうですが、ソーシャルメディア上に現われていない消費者の声はたくさんあります。質的にも量的にも。

記事中でも紹介されているようにブログやツイッターの投稿を分析するサービスはたくさんあって、それで流行や評判を本当に把握できると思いますか?
こうしたサービスが不要だとは思いませんが、限界があること、そのツールの特性を知った上で利用するべきですよね。

と同時にそれを補完するための調査方法についてもしっかり理解しておきたいものです。
ツイッターの中でだけ人気者だとしても意味がないですから。

一度同じテーマでそれぞれがどんな結果を導き出すのか実験してみたいですね。

深田 航志

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