ブックマーク→購読→フォロー→?
インターネット上の情報が幾何級数的に増えるに従って、それらの情報、とりわけ継続的に受信したい情報発信源(サイト)の管理方法が変化してきました。
もっとも多くの人にとってはあまり関係のない話ではあります。RSSリーダーも使ってないでしょうし、ツイッターのアカウントも持ってないでしょうから。
今回の話は比較的ネットリテラシーが高く、長時間利用している人の話です。
情報量の増大に伴う管理方法の変遷
まずはこれまでの流れを整理しましょう。
当初はブックマーク
1990年代から2000年にかけての検索エンジンはディレクトリ型が主流で、Yahoo!Japanのトップページもディレクトリがメイン部分を占めていました。
Yahoo!にはサーファーと呼ばれるチームがあり、日々誕生するサイトを目視でチェックしてカテゴリに沿って分類していました。つまり人力で整理することができるくらい、サイトの絶対数が少なかったとも言えます。
ちなみにいまではディレクトリ(Yahoo!カテゴリ)は別ページになっています。
当時は個人のサイト管理もブラウザのブックマーク(お気に入り)が中心で、さらにはそれと同等のリストをリンク集として自分のホームページで紹介する人もたくさんいました。
ブックマークでの管理はいまでも使われていますし、それこそブログのログイン画面や利用頻度の高いECサイト、あるいは「食べログ」のような専門検索サイトへ簡単にアクセスできる方法としてブックマークは最適だと思います。
その一方で、いつ更新されるかわからない友人のブログなどをブックマークからアクセスすると「残念、まだ更新されてなかった」ということが少なくありませんでした。
(ちなみに2000年当時はブログはなかったので、対象はホームページや日記でした)
だいたいの場合において、ブックマークの登録数は毎日増えていくわけですが、多くの人は毎日自分の日記を更新したりはしません。いまのように更新も簡単ではなかったですし、インターネットへのアクセス環境もまだまだ限られていたので、週に数回しか更新されなかったのが当時の状況です。
そこで出てくるのが「更新されたサイトだけをチェックしたい」というニーズです。せっかく訪問しても更新されてなかったら時間のムダですからね。
この頃は「WWWC」というソフトウェアや「はてなアンテナ」(2002年)などを利用して、更新チェックをしていました。
RSSの登場と購読(サブスクライブ)
2003年以降、変化が起こります。それはRSS(とRSSリーダー)の登場です。これはブログの普及が大きく後押しするのですが、いまではニュースやブログの更新情報だけじゃなく、検索結果などもRSSに対応しています。
そもそもRSSという仕組みは以前からあったもので、1999年3月にUSのネットスケープコミュニケーションズが策定したものです。その仕様・仕組みをブログが採用したということです。
ブログがUSで普及し始めたのが2001年頃、日本では2003年頃だと言われていますが、ブログの登場以降、(その投稿の手軽さゆえに)インターネット上の情報はさらに増えました。それこそ爆発的に増えたと言ってもいいでしょう。
(その少し前の無料ホームページの登場と普及の頃から、検索エンジンもディレクトリ型に限界がきて、ロボット型が主流になります)
2009年に総務省が発表した「情報流通インデックス研究会」報告書に情報量の伸びがグラフ化されていますが、これを見ると実感できるかと思います。
(補足しておくと、これはサイト数ではなくトラフィックですので、利用者数の伸びによる影響も少なくありません)
ブログを中心にこれだけ多くの情報が不定期に更新されるようになると、とくに大量の情報を収集する人にとって更新通知として使えるRSSは不可欠なものになりました。
RSSでチェックするにはRSSリーダーと呼ばれるサービス、もしくはソフトウェアが必要です。最近ではブラウザに統合されているものもありますが、多くの人は「Googleリーダー」などのサービスを利用しているでしょう。
またRSSリーダーに新しいRSSをチェック対象として登録することを「購読する(サブスクライブ)」と呼びます。
RSSリーダーはカテゴリ分類も自由にできるため、「友人のブログ」や「ネットに関するニュース」などを作成することで、数百件を超えるサイトの更新を自動的に検知して漏れなくチェックすることができるのです。
しかしながらRSSにも課題はあります。
事実、RSSリーダーを使っている人がそれほど多くないことが証明しているように、利用開始に関してのハードルが高いことが挙げられます。
また個々のブログなどをRSSリーダーに登録するのが面倒というのもあります。多くのRSSリーダーはブックマークレット(bookmarklet)と呼ばれる仕組みで新規登録をするわけですが、これを理解できるのはよほどパソコンやインターネットに詳しい人に限られてしまうため、いまでもブラウザのブックマークを利用している人が多いわけです。
そしてフォロー
ここ数年のインターネットの大きな変化のひとつが「リアルタイム化」です。ケータイでのインターネット利用が一般的になり、またツイッターに代表されるミニブログが登場したことで四六時中ネットの情報は更新されるようになりました。
頻繁に更新されるということは、情報が細切れになるということでもあります。
たとえばブログならせいぜい日に数件の更新しかなかったのが、ツイッターになると日に何十件も更新されるため、消化する側にもより効率化が求められます。
(あえて言うなら、「すべてを読み切れない」という諦めも必要になってくるでしょう)
そもそもある人にとって興味のある情報発信源は、日々変わるものです。RSSリーダーでも購読や解除は簡単にできるのですが、ツイッターが提供する「フォロー」という仕組みはそれをさらに簡単にしたものです。
ツイッターのタイムラインをRSSリーダーの進化形と見る人がいるように、対象となる情報がツイッターに限定されるとはいえ、じつに簡単に情報を取捨選択し俯瞰することができます。
気になる人のページにある「フォローする」をクリックするだけで、自分のタイムラインに情報が届くようになるのですから、操作も難しくありません。
とくに最近はブログの更新情報をツイッターに自動投稿する人が増えていますし、多くのニュースサイトの更新情報もRSS配信と同時にツイッターに投稿される状況を考えれば、ツイッターをフォローするだけでもかなりの情報を網羅的にチェックできるようになっています。
このあたりはRSSリーダーの利用率とツイッターの普及率によって今後の趨勢は変わってくるでしょうが、いまの勢いで考えても後者のほうが優勢でしょうね。
いったいこれからどうなるのか?
ブックマークからRSS購読、そしてフォローとぼくたちの情報収集、そして情報発信源の管理方法は移り変わってきたわけですが、ではこれからどうなるのでしょうか。
興味対象が人か情報か
ある人の、たとえばぼくに興味がある場合はツイッターをフォローすればいいでしょう。しかしそうではないケースも多々ありますよね。
その人の普段の生活には興味はないけど、ブログに書いている専門的な内容にはとても興味がある場合はブログをRSSで購読するのがいちばんいいわけです。よほどの有名人でもない限り、プライベートに興味がないというのは珍しいことではありません。
ソーシャルメディアの普及に伴って、情報発信源の(企業比率が下がり)個人比率が高まっていますが、個人の投稿はその日に食べたものから映画の感想、政治経済へのコメントなどかなり雑多になるため、今後は情報の絞り込みがひとつの課題になると思います。
もっとも流れとしてはカジュアルな投稿はブログではなくツイッターに、あるいは「食べログ」やAmazonに分散してきているので、全部を読みたい場合と、特定分野だけを読みたい場合の棲み分けはできつつあるようです。
(ぼくのようになんでもかんでもブログに書いちゃう人もいますが……)
興味対象が人か情報かによって、購読する対象を選択できるのはいいことです。
とくに人に対して興味がある場合は、SNSでチェックすることも考えられます。ブログやツイッターの投稿内容がそのままmixiやFacebookに自動でコピーされるようになれば(いまでも一部は可能です)SNSだけで完結することも可能です。
ソーシャルフィルタリングの可能性と限界
情報収集プラットフォームに求められるポイントとしては、以下の3点が挙げられます。
- 簡単に(できればワンクリックで)対象を購読したいし、解除したい
- なるだけ一箇所でまとめて読みたい
- 興味のある分野の情報だけを絞り込みたい
簡単であることは大前提ですが、ノイズを少なくしたいというのもこれからはより一層求められていくと思います。さまざまなサービスが簡単に連携できる反面、ブログと同じ情報がツイッターやFacebookで重複して流れてくることも増えるため、こういった情報をどのように排除するかも課題になってくるでしょう。
また、あれこれとサービスに登録したくないのもユーザーの本音なので、Googleリーダーや「livedoor Reader」のように既存のアカウントでそのまま利用できるタイプのサービスは有利でしょうね。
最近では「ソーシャルフィルタリング」という言葉も出てきています。これはわざわざ自分でいろんなRSSを購読して情報を摂取しなくても、ツイッターなどを見ていれば注目すべき情報は勝手に選別されて届くという考え方で、なるほどそういった側面もないわけではありません。
ただしぼくはソーシャルフィルタリングだけに頼るのは危険だと思っています。「はてなブックマーク」のようなソーシャルブックマークを見ていても、どうしても過激な記事に偏る傾向がありますので、それを補完する別の情報源も確保しておくことが大切です。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏はそれを「キュレーター」と呼んでいますが、まさに自分がフォローすべきキュレーターを見つけることがバランス良く情報収集するためには必要ですし、また発信側であるメディアにとっても今後はどれだけ多くの人にキュレーターと認めてもらえるかが価値を計る指標になると思います。
佐々木さんの概念では「キューレーション」を情報を収集・選別・意味付けして共有することと定義づけています(そのキュレーションを行なう人がキュレーター)。詳しくは以下のやり取りをご覧ください。
じつは情報をどのツール・サービスで収集するかはたいして重要ではありません。むしろ情報が細分化され、またサービス間で簡単に連携されるようになると、どうやってでもチェックや管理はできてしまいますので、自分が普段使っているサービスを使えばいいでしょう。
それよりもひとりじゃカバーしきれないこの情報量をどうやって漏れなくチェックするかを考えることが重要になってきます。と同時に、ただ情報を収集するだけではとてもすべてを消化しきれませんので、集めた情報を選別する必要も出てきます。
自分の代わりにインターネットの広大な情報の海から、価値ある情報を見つけてくる仕組み、またそれらを分類し消化しやすいように整理する仕組みが必要です。
それはプログラムで解決できる部分もあるでしょうし、上述のキュレーターのような人力で解決するほうがいい部分もあるでしょう。
これから先、インターネット上の情報が減ることはまず考えられない中で、どうやって情報消費の効率化を図っていけばいいのでしょうか。そこに新しいビジネスチャンスやメディアの形があるのかもしれませんね。
みなさんは今後どうなると思いますか? ぜひコメントでご意見を聞かせてください。