ad:tech Tokyo レポート vol.4 「ブランド担当者の本音」

9/2,3に行なわれた、「ad:tech Tokyo 2009」のレポートをはせれいさんに寄稿していただきましたので、ここに掲載します。

モデレーター:
●大岩 直人 (株式会社 電通 コミュニケーション・デザイン・センター シニア・クリエーティブ・ディレクター)

パネリスト:
●井上 一郎 (株式会社アサツーディ・ケイ 第1クロスコミュニケーション局長/360コミュニケーションディレクター)
●藤田 康人 (株式会社インテグレート 代表取締役)
●渡辺 春樹 (本田技研工業 株式会社 営業開発室マーケティング戦略ブロック主幹)
●三宅 隆介 (日清食品株式会社 宣伝部 Webチームリーダー 「フリーダム」キャンペーン)

1.本質的には、「クライアントと広告会社の関係」とは何か?

三宅氏 :「クライアント」と呼ばれるのがすごく嫌い。距離があると感じる。何事もするにあたって、スピードが重要なので、「チームのメンバー」という意識でいてほしい。

渡辺氏 : 語源的にクライアントととると、「私たち、患者じゃないよ」と思う。持ち上げているようで、何気に「見下しているんじゃないか?」って思う。うちのなかで、特訓してもらっている。チームのメンバーの一員としてやってもらわないとスピードが間に合わない。

大岩氏 : リスペクトしているようで、そうではない。「そんなんじゃダメだよ」と言われたことがある。

藤田氏 : 「クライアント様」くらいに思っているよ! 「NO」と言いづらいと思っているけど、ズバっと言い切る。代理店が言いにくいことを、僕らがいう。パートナーとして重要なことは、きちんと言ってあげるということだ。

井上氏 : 戦々恐々で今までやってきた。パートナーと言われるのはありがたいことだ。プランナーとして担当することもあるが、本当の意味で産みの母親にはなれない。けれども、一緒に取り組んでやれるだろう。育ての乳母にはなれるかもしれない!

2.メディアがニュートラルなら、広告会社だってニュートラル?役割に捉われないフラットな組織?

大岩氏 :本当の意見を言えるのか? 例えばテレビやめてウェブやろうとかが代理店は言えるのか?

井上氏 :ひとつひとつのメディアを使った場合、どのくらいの利益が入るかを意識していない。ブランドとは、生活者を結ぶすべてのものが対象になる。3人で2億稼げるものもあれば、5000万で10人かかる場合もある。代理店としてベストウェイをすべきではあるけど、より利益率がよくて簡単なメディアを提案してしまうことがあるのではないか。しかし、そういったマージンの呪縛から囚われないようにしていきたい。

大岩氏 :リアルな意見がほしいですね?、事業側の。

三宅氏 :完全にフィー制にいくのは難しい。我々のビジネス上、テレビに頼らざるをえないという問題はある。新しい領域の商品、新しい通販商材に関してはフィー制度を導入している事例もある。この先、いい形でフィー制度を組み込んでいきたい。

藤田氏 :フィー制度で頂いている。プランニングブティックなので、マーケティング戦略の立案でフィーをもらっている。クリエイティブエージェンシーでも、もらっている。自社の7割はフィーで成立している。我々はコミッションを頂いていない。ないものの強み。社員が「売り」をわかっていて、現場をわかっていることが強み。

渡辺氏 :もう代理店さんとはフィー制度をはじめている。フィーだけでは食べていけないのはわかっています。だから、成功指標をもって成功したら成功報酬型も導入している。

3.渡辺氏より「トリプルメディア」にの講演

ソーシャルメディアがでてきたといえど、自分で作ればいいんだ。企業サイトを「自前のメディア」や「ROIの測定器」として使う。代理店もメディアもいらんよ! というのが正直なところです。

(1)車購入の「きっかけ」となった情報源の推移
テレビはどんどん下がってきているがまだ1位をキープしている。2位はネット。
(他のメディアが何十年もかけて伸ばしてきたのに、ネットはここ10年で急上昇)
新聞やセールスマンもどんどん下がってきている。

(2)ネットが車購入時のNO.1のメディアに昇格
しかもOwend Media(メーカーサイト)。
つまり、こういう風な推移をみていくと、自社メディアを強力にすればいいのではないかと考えている。

メディアとしての価値は信頼性だ。インタラクティブなメディアだから、きちんと顧客に対応すればいいだけだ。マンパワーはかかるが。
自社メディアをうまくつかうと、広告のアカウンタビリティができる。

(3)マス広告投下量とウェブサイト訪問者数は比例する。

効果測定は、やれば必ずできる時代になった!

(4)宣伝効果の可視化とリアルタイム・マーケティング
(メディアの時間差効果測定でライフスタイルのターゲティングも可能)

製品への関心はウェブ視聴率で分単位でわかる!
(ミニバンAで120秒のインフォマーシャル5本をいれると顕著な誘導効果が見られる)

広告のアカウンタビリティがすべてできるようになったと自信をもっていえる。それは、テレビだけでなくイベントだけではなく。

4.三宅氏より講演「これからの広告会社に求めること?フリーダムキャンペーン成功からみえたヒント? 」

○現場ではどんな問題が起きているか?
いろいろなマーケティングアイディアがあるが、現場が一番追いついていない。ゴールを見失っている。

○前代未聞の広告キャンペーンはなぜ成功したのか。
テレビCMの枠を超え、広告からコンテンツが生まれる新しいモデルを発信した。若者に刺激を、というゴールを設定していき、すでにあるキャラクターを「借りて」きて、カップヌードルのCM展開する従来の方法を超えることができた。

○このチャレンジングな試みをなぜできたか
フリーダム製作委員会を日清と広告会社でプロジェクトを組んだ。フリーダムというプロジェクト自体が全体のディレクターになる。ここが秘訣のひとつ。

ヒント1.オールラウンドな知識・経験をもつスーパーディレクターの存在
ヒント2.企業宣伝部と広告会社を並列にするプロジェクト化

○これからの広告会社に求めること
必要なのは、次々と登場する新しいマーケティングアイディアの実行力。各部門のスペシャリストを最大限活かすディレクション力が必要。そのためには、メディア環境・コミュニケーション環境の変化に対応した体制と、OJTとは別次元でのヒューマンリソース育成が必須だ。

5.藤田氏より「情報クリエイティブ」に関する講演

広告クリエイティブとは、広告枠内のクリエイティブでありイメージ創造をする必要がある。一方で、提案する情報クリエイティブとは、広告枠外のクリエイティブであり、事実に基づいた情報創造が必要になる。

○なぜ、情報クリエイティブが求められているか

Attentionをとるまえに、Interestをとる必要がある。”No interest, No attentin.”

○客観的で、影響力のある情報は3つの要素で構成される

優れた情報コンテンツとは、ソーシャルインサイト×ターゲットインサイト×メディアインサイト×ストーリー転換。ソーシャル・ターゲット・メディアの3つの視点からinterestの鍵を開ける情報を解決

※事例:東芝クリーナー「Quie」

調査から見出したファクトは、静音家電市場のカテゴリー化と、「夜間に家事をする」人が増えていることだ。そこから「夜カジ族」を導いた。
メディアと一緒にコンテンツ開発をしていき、それが雑誌メディアの連鎖化していく。

○情報連鎖のプロセス

次世代統合マーケティングプロモーション。メッセージ×メディアの統合。

6.井上氏より「統合コミュニケーションプランニングのパターン」

冒頭に「注意:これからお話することは会社全体を背負った発言ではなく、あくまで個人的な視点のものです」との断りあり。

360度プランニング、すなわち、メディアニュートラル。ソリューションニュートラルな統合コミュニケーションプランニングにおいては、必然的に、分業型の組織やチームではなく、専門家が統合された組織が必要になる。

  1. 伝統的なメディアミックス
  2. クロスコミュニケーション型
  3. クロス・メディア型
  4. ブランデッドコンテンツ型

すべてのスタッフがチームとして分業ではなく、共にコアアイディアを考え実行する。業務遂行にあたり、当該プロジェクトにおいてもっとも重要なプランニングパートからコミュニケーションディレクターを選ぶ。コミュニケーションディレクターは、営業とともに、プロジェクト全体をマネジメントする。消費者、ブランド、エージェンシーとのパートナーシップを結ぶ。

7.最後にひとこと

大岩氏 :「そうはいっても、まだ代理店」と思ってらっしゃる方もいると思いますが、いかがですか?

渡辺氏 :広告は昔から50%は役に立たない。もう、広告の効果は変わった。残り50%の贅肉を捨ててくれれば役に立つのでは?

三宅氏 :現場の実行力。運動さえすれば、贅肉は筋肉に変わるよ!

藤田氏 :広告会社は人が多い。うちが1人のスタッフがやっていることを10人かけてる。体脂肪率を減らそう!

井上氏 :贅肉大好き!少なくともいえることは時間の使い方とか、無駄を省く。

河野コメント

「クライアント」って呼称なんてどうでもいいと思うけどね。

はせれい

マーケター+ジャズシンガー

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