顧客とのコミュニケーションはトレンドに左右されず目的や用途に応じて考えるべき

近ごろ何かにつけて流れが早い。特にネット業界や広告業界に関してそう思う。
反対に肝心のユーザーサイドはというと、盛り上がっているのはトレンドセッターやガジェット好きなど一部のイノベーターやアーリーアダプターな人たちだけというのが本音のところではないだろうかと感じるわけだ。

実際のところ、企業のマーケ担当者や広報担当などはどうなんでしょう。上司や周囲が何かにつけて「ネットだ、ネットだ」と言うもんだから、情報を追いかけざるを得ない。でも、やる人間がいない。時間がない。黎明期にはサイトの管理だけやっておけば良かったが、今ではウェブ担当がいても対応する媒体が多くて回りきらない。売り込みも多いし、本音のところではネットマーケティングやネット販促に用いられるトレンドの流れの早さや複雑さに辟易としている輩も多いのではないだろうか。

顧客とのコミュニケーションを考えるための5つの視点

私も比較的踊らされている部類かもしれないが、何か自分のために考え方をまとめる機会を持たないと新しいツールが出てくるたびに振り回されることになるのはイヤなので、シンプルに考えて、顧客とのコンタクトポイントやコミュニケーションをとるときはこういうことがいいんじゃないか、的なことを考えてみた。

少し脱線するが、デバイスを見てもスマートフォンがこれだけ騒がれているが、携帯電話全体の中のシェアで見ると、20%に達するかどうかぐらいですよね。確かにiPhoneをはじめとするスマホは周りにもずいぶん増えたが、半分ぐらいが使ってるという印象には行き着いてない。

ここでは顧客とのコミュニケーションにどんなツールが良いかという考え方を整理するのに「急・今・旬・深・集」という言葉を使ってみることにする。つまり、○○をしたいときに使うのは○○が良い。みたいな基本線。
※ごくごく簡単なことを書いてるので、どっぷりとウェブに浸かっている企業には不要だろうから読まなくても結構ですよ(笑)

「急」

顧客が怒ってたり、不満が爆発していたりするとき、特に急いでいるとき、今でも真っ先に考えるのは電話。当然のことながらこのコンタクトポイントは必要。
最近ではネット通販でも案外電話番号を全面に出しているところが多い。ネット人口が急激に増え、リテラシーの低い方もネットを使うため、解決できないことは多いのだ。ネットのほうが効率が良いのはわかるが、「効率」という言葉は完全に企業側の理由でしかない。
電話をいやがる会社も多いが、「話せばわかる」ということも多い。また、社内の処理フローがきちんと体系化できている会社であれば、ウェブからやメールでの問い合わせ窓口も対応が早いところはあるのだ(リソースの問題はついてまわるけど)。

「今」

企業やブランドの現在の状態(経営状況や売上、信用できる会社かどうかなど)を顧客に知っていただくためのポイント。今だに多く存在するが、冊子系の会社案内や広報誌。初対面で説明するのには良いのだが、もらっても処分に困るというのが本音の媒体。
今の世では企業のウェブサイトが中心だが、メルマガも意外と良い。メルマガは即効性がなくなってきているかもしれないが、情報の受け手のペースで読めるし、ライティング次第では魅力あるものにできるのでまだまだ健在だと思う。

「旬」

企業やブランドの旬な話題は何か? 旬なお買い得情報は何か? などを知っていただくにはインターネットという媒体が一番向いている。ウェブサイトでの情報開示が中心となるものの、情報の鮮度や更新頻度を考えると、ブログやツイッターのような媒体が奏功する。一方的に情報を送るのであれば、FAX通信や紙のダイレクトメールも良いが、FAXはまだしも、紙のダイレクトメールは届いたときに情報鮮度が古くなるというリスクがある。
当たり前だが、おもしろいツイッターは好まれるし、楽しいブログは読まれる。
ただし、運営には土地勘のある社員の登用やそもそもリソースが……という話になる。

「深」

企業やブランドのことを深く知っていただく。売上・利益・資本金のような表情報ではなく、本業部分以外にどういうことをやっているかとか、製造工程や商品作りの理念など。また従業員のプロフィール(あまりそういうアウトプットはないかな)や代表インタビューなど。こういうのはビジネス誌等の専門誌などに掲載されるケースがあるが、これは自力ではなく他人任せ。なので、自社で構築できるとすると、やはりウェブサイトが一番良いだろうし、更新頻度が高ければ広報ブログというのが近道だ。

「集」

ここが今のトレンド部分にあたる。企業やブランドに対する「意見」を集めるという部分。以前の表現だと掲示板とかコミュニティ。今だとレビューとかソーシャルの利用でしょう。
特にソーシャルの部分は今話題なだけに論者によってはいくらでも深掘りできるが、Facebookファンページ開設やツイッターアカウントの開設など現在ではいくらでも方法はある。
ただし、あくまでもその企業やブランドがどういう目的をもって、ソーシャルを活用するのか、何を知りたい?何を聞きたい?そういうことを考えずに「どうもソーシャルが良いらしい」ということで手を出すのは本当に危険。
また、この項、古くからある手法だが、アンケートとかグルインというものもある。何もネットを使って不特定多数の意見を集めると力まなくても調査会社などに頼むこともできるのだ。

このように自分たちの会社が顧客とコミュニケーションするには何をどう開示していくか、知っていただくか、集めるかなど目的に応じて使える媒体やツールは変わってくる。全部やる必要はないが、自社の顧客プロファイルから考えて優先順位を決めて取り組みもの(こと)を決めていくのが良いだろう。使えるコストには限りがあるので、トレンドに流されず、やるべきことをしっかりと見極めたいものである。
その際の課題の抽出とゴール設定だけはお忘れなく。

※「顧客とのコミュニケーションはトレンドに左右されず目的や用途に応じて考えるべき|ビジネスに効くクスリ」からの転載です。

河野コメント

最近は「集」のところばかりがクローズアップされがちなのですが、そもそも論に立ち返れば、誰を集めるか、なぜ集まってくれるのか、集めてどうするのか、といった前段を無視してしまっているケースが多いように見受けられます。
大西さんが最後に書かれてるように「課題の抽出とゴール設定」は必須というか、ここから始めることを忘れてはいけませんね。

マーケティング戦略上、「広」くという観点も必要なのでしょうが、個人的にはやはり今後のマーケティングはこれまで以上に「深」さを追求していくべきだろうと感じています。
そのために取り入れられるものはなんなのかを考えながら、新しいテクノロジーやサービスを見極めていきたいものですね。

大西 理

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