ad:tech Tokyo レポート vol.5 「行動ターゲティング」
9/2,3に行なわれた、「ad:tech Tokyo 2009」のレポートをはせれいさんに寄稿していただきましたので、ここに掲載します。
モデレーター:
●真野 英明 (日本インタラクティブ・マーケティング株式会社 代表取締役)
パネリスト:
●大山 忍 (オムニチュア株式会社 コンサルタント)
●Hirsch Jeff (AudienceScience President & CEO)
●岩下 充志 (日本マクドナルド株式会社 執行役員・マーケティング本部長&CMO)
●高柳 直明 (全日本空輸株式会社 営業推進本部 WEB販売部 サイトマネージメントチームリーダー)
●友澤 大輔 (株式会社リクルート マーケティングプラットフォーム推進室 マーケティング推進グループ インターネットマーケティング室 ゼネラルマネージャー)
行動ターゲティングの市場規模は120億(マイクロアド調べ)といわれ、米国は約8倍の市場。
1.高柳氏によるANAのウェブプロモーションについての講演
メディア系(Yahoo!ブランドパネル、MSN)→ターゲティング(行動、サイト)→リスティング
上記の組み合わせをどう最適化していくかが課題。
ANA SKY WEBの行動ターゲティングは、IP情報や登録情報を読み取っている。地域のターゲティングが一番ハズレがない。
女性をターゲットにしたらはずれたことがある。
行動ターゲティングに伴い、ページの最適化として以下を実践したことがある。
- テキストの文章・色を動的に変更
- サイトの構成を自動的に変更
- サイトの写真を自動的に変更
2.岩下氏によるリクルートの行動ターゲティングについての講演
- 「ユーザーを動かす」アプローチだけでなく、「動いたユーザーから学ぶ」アプローチが必要
- 全体を通したユーザー行動の可視化
- ビジネス制約を考慮した最適化アプローチ
- 効果をコントロールし、効果の上げすぎを抑圧
3.友澤氏によるマクドナルドの行動ターゲティングについての講演
年間14億人のお客がきていて、国内のセールス責任を負っている。
マクドナルドは、絞りこむとインパクトが小さくなるというジレンマがある。
優先度が高いのは、やはりテレビCM。1400万人にすべて同じ情報を送っている。
正直まだ、カスタマイズした情報を送ることなどしていない。
マーケティング活動の目的は、セールスにつながる。
モバイル会員は、来店してもらうためのツールであってオフィスやランチの前に見てもらうもの。
来店につながるものから優先的に実施している。
4.オーディオサイエンスの歩み by:Hirsch Jeff
ユーザーの場所・時間に縛らせず、リーチ可能な技術とマーケットプレースを提供する唯一の単独企業。
○新技術と傾向
- 広告価格
- 広告主のオンライン広告用予算
- 1社モデル 対 ネットワークモデル
- BTの評価
- モバイル広告市場
○真野氏より、高柳氏への質問
属性でターゲティングは難しい。シニアだからこういうのが好きだろう、では外れる。お客様の嗜好でするのは外れたことがないはず。
行動ターゲティングの設計をすることが一番ポイントになる。判断する方の能力とは、誰に何を売るかという基本的な部分がしっかりしている必要がある。
5.オムニチュア大山氏によるウェブサイトにおけるビジネスゴールの講演
行動ターゲティングというところで考えると、どのセグメントが企業にとってビジネスゴールかを考える必要がある。
ほとんどの米国マーケターはウェブアクセス解析はを導入している。今後に関して一番導入したいのが最適化マーケティングと言われている。
自分たちのゴールにあったマーケティングツールは何かということを考える必要がある。
ベンダーにいかにツールを利用してもらうかというのが自分の日々の業務。
しかし、組織横断的に調整がきかないのか、上司を説得できないのか組織の相談をよく受ける。
○大山氏からパネリストに質問:新しいツールを導入するのに苦労したこと
◆友澤氏より
高額なツールなのは難しい。まずは、ROIを設計している。苦労しているし、苦労してきた。
◆高柳氏より
昔は好き勝手やっていたが、効果を出していくことを進めていく。熱く「これが必要だ!」と訴える。
◆岩下氏より
そもそもになるが、マスマーケティングになると、「最適化」というのはわかるが、5%のお客が2倍になっても絶対値的に意味がない。
要は、全体マーケティングバランスをみていく必要がある。率と量のバランスをみて導入していく。
◆Mr.Jeff氏より
スケールを考えるなら、より検討すべきだ。
6.パネリストに対しての質疑応答
○メディアとしては、まだカテゴリー広告などを売りたいと思っている。ただ、行動ターゲティングにとられている感がある。メディアターゲティングはどうか?
◆高柳氏より
そのメディアが抱えているユーザーがどういった層で、うちのメディアにとってどうかがポイント。マスのなかには、サイト特有のユーザーを持っているものもある。効果のあるものによりシフトしていくという考え方。
◆友澤氏より
比較的、動的より静的なターゲティングを好むが、両方の組み合わせが必要。
7.最後にひとこと
◆高柳氏より
より売上をあげるために、より自動的に情報を顧客に発信できるようにしていきたい。
◆岩下氏より
狭い意味の行動ターゲティングはまだ出来ていない。ビジネスニーズに対して新しいことをやっていかなければならない。小さいところから積み上げていくことをやっていきたい。
◆友澤氏より
リクルートとして無駄を省きたい。広告のROIを高めるために、より行動ターゲティングをやっていきたい。
◆大山氏より
行動ターゲティングに限らず、オンラインマーケティングにおいてシームレスになっていく。カスタマーエクスペリアンスは最適化していく。
マーケターは、データにおぼれないようにしなくてはいけない。目的を明確にする。
河野コメント
行動ターゲティングは「人」に届けるという点では非常に興味深いし可能性もあると思う。ただし、プライバシー等の課題はあるし、そもそもの広告在庫(あるいは出稿対象人数)が豊富になければマッチングが成立しないので、すべての企業、すべてのブランドが行動ターゲティングでうまくいくかというと、かなり難しいと思う。