CSR

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概要

CSR(Corporate Social Responsibility)は「企業の社会的責任」と訳され、企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、および社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることを指す。

日本では利益を目的としない慈善事業(いわゆる寄付、フィランソロピー、メセナ)と誤解・誤訳されることも多い。

提唱者等

不明。

解説

21世紀に入ってから、企業の社会的責任について様々な局面で求められることが多くなっている。 企業の社会的責任といった場合、エンロン、ワールドコム等の重大な企業の不正行為の発生によって強く意識されることとなった、アメリカ型の利害関係者に対して説明責任を果たし、会社の財務状況や経営の透明性を高めるなど、適切な企業統治とコンプライアンス(法令遵守)を実施し、「リスクマネジメント」、「内部統制」を徹底する活動と、ヨーロッパ型の企業の未来への投資の一環として持続可能な社会を実現するため、環境や労働問題などについて企業が自主的に取り組む活動という2つの側面があげられる。 これら2つの側面は互いに強くかかわりあっている問題であり、適切な企業統治や法令遵守を実施することなしに、環境や労働問題の改善を図ろうとすることはしばしば企業の永続性の問題を生じさせるであろうし、自社の利害関係者に対して説明責任を果たしていく過程においては、環境や労働問題の改善を図る活動を求められることもでてくることになろう。

誤解されやすいことであるが、CSRは法令遵守そのものや、顧客や消費者に、その企業に対しての信頼や安心感などプラスのイメージを与えることを企図したPR活動やCI活動とは峻別される。PR活動やCI活動は企業の営業活動の一環としておこなわれるものであるが、CSRは企業経営の根幹において企業の自発的活動として、企業自らの永続性を実現し、また、持続可能な未来を社会とともに築いていく活動である。また、企業倫理とも誤解されがちであるが、企業倫理が、営利活動を含めた企業のすべての活動を行う際の規範であるのに対して、CSRは企業の自発的活動であり、あるいは企業行動に際して、社会的存在としての企業が、利害関係者から、あるいは社会から自発的に行動するよう求められるものである。

一般に企業は経済的な利益を上げることにより永続的な存在となることを目指す法人であるが、企業の行動は単にその企業の利益のみによって計れるものでも、限定されるものでもないため、市民としての企業(企業市民)の、企業の社会的業績も当然企業の行動の結果として現れることになる。よって望ましい企業の社会的業績が実現できるよう市民としての企業(企業市民)は行動するべきであるというのがCSRについての考え方である。

厳密には、CSRは概念が固まっているとは言い難く、明確に定義することは困難であるが、最も基本的なCSR活動として挙げられるのは、企業活動について、利害関係者に対して説明責任を果たすことであるとされる。

歴史的には、環境問題が盛んに言われるようになった頃から、企業の環境破壊に対抗する主張として考え方の基礎がつくられ発展したと言われるが、環境(対社会)はもちろん、労働安全衛生・人権(対従業員)、雇用創出(対地域)、品質(対消費者)、取引先への配慮(対顧客・外注)など、幅広い分野に拡大している。なお、国連では、このうちの「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」に関する10原則をグローバル・コンパクトとして提唱し、世界中の企業・団体に参加を呼びかけている。

CSR活動への評価は、企業の社会的業績として多くの人々によって検討されるため、株価にも反映されやすい。反対に、商品の欠陥などの不祥事やスキャンダルなどで、社会的責任を果たしていないと判断された企業では、売り上げや株価が落ちることもある。

寄付、フィランソロピー、メセナという意味で使われることもあるが、上記の説明からも分かるとおり、そのような解釈は間違いだと言える。

会社法において、株式会社につき、CSRをどのように扱うべきかについては議論がある。経営者は、法令の範囲内において株主の利益を最大化すべき、という(少なくとも法学の世界においては)伝統的な考え方に対して、経営者がCSRを考慮することを積極的に認める見解がある。後者は、現代社会におけるCSRの重要性をその根拠とするものであるが、前者の立場からはCSRの名の下に経営者の権限濫用を許しかねない等の批判がある。もっとも、前者の見解はCSRを全く無視すべきというのではなく、あくまで株主の利益の最大化の手段として考えるべきこととなる。

参考事例

  • 「企業の森」と呼ばれる都道府県や地元の森林組合などと連携した森林の育成
  • 銀行主催で銀行員による金融の分かり易い授業を小中学校で行う(例:りそな銀行による「りそなキッズアカデミー」など)
  • そごうでは、成長して履けなくなった子供用靴を消費者から下取りし、国際協力NGOジョイセフ経由でザンビアの子供たちに贈る活動を行なっている

参考URL

参考書籍

  • 社会的責任のマーケティング—「事業の成功」と「CSR」を両立する ISBN 978-4492555743
  • ヨーロッパのCSRと日本のCSR—何が違い、何を学ぶのか。 ISBN 978-4817191601
  • CSR入門—「企業の社会的責任」とは何か ISBN 978-4532110406
  • CSR 企業価値をどう高めるか ISBN 978-4532311810
  • 企業の社会的責任(CSR)の基本がよくわかる本—取り組む理由から業務に組み込む工夫まで実践のためのポイント35 ISBN 978-4806132837
  • 企業の社会的責任(CSR)の徹底研究 利益の追求と美徳のバランス—その事例による検証 ISBN 978-4903532295

関連項目

関連マーケティング

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