これもマーケティングの教科書には必ず載っていますが、今日は、SWOT分析について解説したいと思います。

SWOT分析

SWOTというのは、それぞれ強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の頭文字をとっていて、「スウォット」と読みます。自社の製品やサービスを取り巻く要因を整理して分析することで、どのような戦略を立てるかを検証するために使います。

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内部要因

まず内部要因とはなんなのかを説明します。

これはシンプルに自社の長所と短所に置き換えてもかまいません。競合他社と比べて、何が秀でているのか、そしてどこが劣っているのかを整理します。人間であれば「身長が高い」「学歴がない」「美人」「食べるのが早い」となんでもいいので、勝負できるポイントと、勝負したくないポイントをピックアップすることが大事です。

実例で見てみましょう。キリンが作った「生茶」のペコロジーボトルですが、あれは同社の技術力があったからこそできた製品です。同社のウェブサイトには以下のような説明があります。

現在、ペコロジーボトル商品は「キリン生茶」や「キリンアミノサプリ」、「キリン極烏」、「キリン茶来」、「キリンアルカリイオンの水」の5商品へと拡大しています。ここでは、世界に誇る高度な「ペットボトル成型技術」と「無菌充填技術」により自社工場である湘南工場で、ペコロジーボトル商品が作られる過程をご紹介します。

ペコロジーボトルができるまで

このように圧倒的な技術力や、あるいは特許などがある場合は「強み」になります。優秀な人材がいる、ブランド力がある、というのも「強み」ですね。

逆に創業期のベンチャーのように資本力がない、というのは「弱み」になります。小売店であれば品揃えが競合よりも悪ければ、これも「弱み」になります。

ここで意識しておきたいのは、「強み」も「弱み」も相対評価である、ということです。

このあたりを間違えている書籍などもあるのですが、実戦的であるためには主観は不要です。常に客観視し、ライバルに対して何が秀でているのか、何が秀でていないのかを確認しましょう。それこそ、わかりやすい例で言えば、合コンに行く時は「今日の参加メンバーで自分が一番男前だ」と考えるでしょう。それと同じです。競争相手に勝っているかどうかが重要なのです。

外部要因

それでは外部要因についても見てみましょう。

例えば私立校のマーケティングの場合、ゴールはもちろん「入学者を増やす」ことにあるわけですが、少子化の影響をもろに受けます。これらは外部要因による「脅威」ですね。また、景気が上向きで国公立よりも私立のブランドを支持する風潮が出てきていれば、これは「機会」にあたります。

ベッドタウンが近くにできた、私鉄の沿線が延びて最寄り駅ができた、というのも「機会」ですね。逆に、隣の高校が甲子園に出た、(共学校の場合)TVドラマによって男子校ブームになったというのは「脅威」ですね。

もうひとつ。書店業界の場合を考えてみます。出版市場は年々縮小していますが、Amazonなどのオンライン書店は毎年売上を伸ばしています。

これが意味していることはなんでしょうか。まず、出版市場の縮小はすべての書店にとっての「脅威」です。そしてインターネットの普及はオンライン書店側から見れば自分たちの売上を伸ばしていく「機会」であるし、街の書店にとっては「脅威」になります。

「ハリー・ポッター」や「バカの壁」などの大ヒット商品が出るのは「機会」ですし、テレビゲームやケータイ電話の影響で読書時間が減っていることは「脅威」です。

このように「自分たちにはどうしようもできない」外部環境による影響を整理するのです。政治や経済のような大きな話から、テレビによるブームなどの小さな話まで、外部要因にはさまざまなレベルの「機会」や「脅威」があります。

SWOT分析は何に使えるのか

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まず、すべての「弱み」を克服しようなどとは考えないことです。完璧な人がいないように、完璧な企業もありません。トヨタにも、GEにも弱みはあります。商品やサービスに置き換えてもそれは同じです。あれだけ売れたシャープの液晶テレビAQUOSにも、アップルiPodにも弱みはあります。

大事なことは自分たちの真実の姿を知ることです。「強み」と「弱み」がわかれば、強みを前面に出した広告を出すことができます。「弱み」についても、もしそれが致命的な理由なら最低限の改善をして、あくまでも自社の「強み」で勝負すべきです。

たとえば、「身長が低いなら、学歴で勝負する」ということです。しかもそれがドラマの影響で東大ブームが起きている今ならなおさらです。

また、「強み」と「弱み」は表裏一体のことも多いので、「弱み」についてあまり神経質にならないほうがいいです。「機会」や「脅威」についても同じで、見方を変えればいくらでも自社に有利にする方法はあります。あるいはそうなるように仕掛けることもマーケティングなのです。

例えば先述の書店業界の話で言えば、本を手に取ることの素晴らしさをプロモーションすることで、インターネットには不可能な領域で勝負を挑むことができます(そういうプロモーションをインターネットでやればいいのにな、とぼくは思います)。

繰り返しになりますが、「SWOT分析」は現状認識のためのツールであって、それ以上でもそれ以下でもありません。だけど現状認識をしないでマーケティングを展開するというのは、地図も持たずに山に登るのと同じくらいリスキーです。

マーケティングは最後の最後まで運に頼ってはいけません。どうあれ最後には運頼みになるのだから、せめてギリギリまで論理的に進めるべきです。

さあ、さっそくあなたの会社、そしてあなたの事業のSWOT分析をやってみてください。

河野

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

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