[書評]WOMマーケティング入門

出版社から献本いただきました。

この本は拙著『そんなんじゃクチコミしないよ。』の読者にオススメします。

編集者の方からこの本の翻訳者がぼくの『そんなんじゃクチコミしないよ。』を読んでとても参考になったと伺っていたのですが、翻訳者の花塚恵さんご本人からもメールをいただきました。

花塚さんによれば、以下のあたりが『WOMマーケティング入門』の著者(アンディ・セルノヴィッツ)と共通しているそうです。

  • これからはネットクチコミだと煽っている人たちがいるけど、クチコミそのものは新しくもなんともない。
  • Buzzはお金で買えない
  • 話題になることと、ファンを作ることは違う
  • 企業と消費者が対等に直接対話できる関係が築けたら素敵

うれしいですね。

この本はWOMMA(WOMマーケティング協会)の名誉会長を務めている、アンディ=セルノヴィッツ(Andy Sernovitz)って人が書いています。まあだからおもしろいとか、だから有益かって話に直結するわけじゃないのですが、セス=ゴーディンとガイ=カワサキが序文を書いてるだけでも興味がそそられます。

正直な感想として、予想以上に良かったです。お客さまに感謝を伝えるとか、至極まっとうなことが書いてあります。クチコミとヤラセ・サクラはちがうという点とか、日本のWOMマーケティングの事情を踏まえると、このへんからちゃんと知っておいてもらいたいですね。

2箇所だけ引っかかる点があって、それはP.176の「メッセージを広めてほしいとお願いする。」とP.248の「普段から訪れる人がほとんどいないブログや掲示板は下手にコメントを入れると、かえって注目を集めかねない。」という指摘。

前者は特に悪いことではないんだけど、相手との関係性次第の部分が大きくて、とくに日本では誰でも簡単にお願いするのは逆効果のことがあるはず。後者については効果の最大化を考える企業向けのアドバイスとしては正しい側面もありつつ、相手のページビューにかかわらず同じ対応をするべきだとぼくは考えているのですんなりとは受け入れがたいです。ブログの読者は少なくても、じっさい現実社会ではものすごいクチコミする人かもしれないわけですし、「クチコミの8割は現実社会で起きている」という主張とも矛盾していると感じました。

それ以外はすごくいい本だと思いました。クチコミには時間がかかること、誠意ある対応が肝心なこと、ネットはクチコミを加速させるツールであること、などはぼくもまったく同感です。

クチコミを起こすのは簡単なことではありません。率直に言えば、大半は運に左右されます。せいぜいできるのは条件や環境を整えることで、その最優先項目は「素晴らしい製品・サービスを作ること」です。
その上で人々が会話の肴にしやすいように、わかりやすいネーミングを考えたり、ネットの場合はバナーを用意したりします。広告を出稿することに比べればはるかに安価ですが、そのぶん自分たちで考えることは多く大変かもしれません。

ただ企業が直接消費者と対話することはとても大きな可能性があります。ヒントももらえますし、強い支えにもなってくれます。
多くの企業にチャレンジしてもらいたいですね。

河野

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

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