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マーケティングにおける「シェア」いろいろ

今回はマーケットシェア(市場シェア)、マインドシェア、ハートシェア、顧客シェアについて解説します。

4つのシェア

マーケティングにはさまざまな「シェア」があります。以下に見ていきましょう。

マーケットシェア(市場シェア)

最初の「マーケットシェア」とは、ある市場における特定ブランドの販売額が占める割合のことです。いわゆる市場占有率のことで、「市場シェア」とも言います。
一般に「シェア」というとこのマーケットシェアのことを指しますし、「シェア争い」というような表現はわりと一般的な言葉としてみなさんも使っているのではないでしょうか。

マーケティングのひとつの目標として、このマーケットシェアを高めるというのがあるわけですが、それはマーケットシェアを高めることで売上も増えますし、さらに規模の経済が働き(いわゆる「スケールメリット」が生まれ)利益率が改善されるからです。
企業の目標が継続と拡大である以上、マーケットシェアは避けて通ることができません。もちろんむやみな拡大はひずみを生みますし、マーケットシェアの拡大によって新たな問題が出てくることがあります。

マーケットシェアの拡大によって、本来その製品やサービスが想定していない顧客層にまで広がってしまうことがあります。そうすれば評判が下がることに繋がりますし、ブランドイメージが低下することもあります。
たとえばグッチやシャネルといったかつての高級ファッションブランドも、バブル時代にその商品ラインアップを展開しすぎたために若年層(それこそ渋谷のコギャル)までが所持するようになると、ブランドイメージはすっかり様変わりしますし、もともとの支持層が離れていきます。

またマーケットシェアを意識しすぎるのも良くありません。市場そのものを小さく定義すれば当然マーケットシェアは高くなります。烏龍茶を販売する際に、烏龍茶のマーケットシェアなのか、お茶全体のシェアなのか、あるいは水やコーヒーも含んだ飲料全体のマーケットシェアなのかによって数字は変化します。
マーケットシェアは小さいよりは大きいほうがいいのですが、大事なのはじっさいの金額であり、定義した市場の成長性です。なぜなら成長する市場に身をおけば楽に売上を拡大できるからです。

名経営者と言われるジャック・ウェルチはGE時代に「マーケットシェアが10%になるように市場を再定義しろ」と言ったそうですが、これもマーケットシェア至上主義への警鐘として捉えれば非常に納得のいく指示です。

マインドシェア

ふたつ目は「マインドシェア」です。これは顧客認知度のことで、ある製品が購入されるときに消費者によって想起される割合のことを言います。

認知度の測り方は難しくて、通常こうした場合の調査には純粋想起助成想起の両方で消費者アンケートを実施することが多いです。
純粋想起というのは「缶コーヒーといえば?」のようにノーヒントでブランドを想起できるかを問うもので、助成想起のほうは缶コーヒーを並べて知っているものを選ぶといったようにブランド名を見せた上での認知度を問う調査です。

マインドシェアの調査には純粋想起が用いられることが多いようですが、じっさいにぼくらが商品を購入するのは店頭が多いわけで、家電量販店にせよコンビニにせよ、ブランド名を見た上での認知率(つまり助成想起)で十分だと思います。

一般にマインドシェアの高いブランドはいわゆる「有名ブランド」ということになるのですが、有名ブランドが必ずしもマーケットシェアが高いとは言えません。いちばんわかりやすいのは「アンチ」の存在ですね。彼らはそのブランドをよく知ってはいますが、顧客には成り得ません。
よって、かなり高い相関関係にあることは事実ですが、マインドシェアの上位ブランドと、マーケットシェアの上位ブランドが異なることは珍しくありません。

ハートシェア

もうひとつは「ハートシェア」です。いわゆる好感度のことです。
ハートシェアとは、ある製品が購入されるときに消費者によって買いたいブランド(自発的に選択するブランド)として挙げられる割合のことを意味しています。

ぼくらが購入する商品は、だいたい複数のブランドが存在しています。テレビもクルマも、缶コーヒーやファミレスもいろんなブランドが存在し、常にそこから選ぶ行為をしています。
その際に大事なことは「安心」や「信頼」なのですが、「安心」は「知っている」ことが大事です。つまりこれはマインドシェアの話です。そして「信頼」のほうがハートシェアです。

ハートシェアはカスタマーロイヤリティと近い部分もありますが、必ずしも顧客(購入者)とは限りません。テレビCMのイメージによって好感度が高まるケースはよくあるように、「自分は買ったことがないけれど機会があれば買ってもいいな」と思えるブランドがハートシェアの高いブランドです。

ハートシェアが高いブランドは検討から購入に至る割合が高くなります。このあたりは自分のこととして考えれば当然ですね。

顧客シェア

最後は「顧客シェア」です。これはマーケットシェアの対比語として用いられます。具体的には、顧客ひとり一人が購入した特定の商品カテゴリーの購入金額に対する、自社商品の割合を言います。
たとえばファッションに使う金額のうちどのくらいを自社の洋服を買ってもらえたか、という数字ですね。分母を市場全体にするものがマーケットシェアで、顧客ひとり一人にすれば顧客シェアになります。

この顧客シェアは「ウォレットシェア(財布内シェア)」と呼ばれることもあるのですが、パーミションマーケティングCRMで重視されるのはこの数字です。ダイレクトマーケティングでも顧客シェアを重要指標と捉えることが多いです。

顧客シェアは購入が前提になるため、あくまでも結果の数字です。これも消費者アンケートで調べることになります。

それぞれのシェアの高め方

基本的にそれぞれのシェアには相関関係があります。
マインドシェアとハートシェアが高ければ、マーケットシェアを高めるのが容易になりますし、顧客シェアが高くなります。

マインドシェアは認知率ですから、これを高めるには宣伝広告が重要です。ハートシェアも広告は重要ですが、それに加えて消費者の体験(本人の体験や周囲のクチコミ)が重要になります。当然そのためには商品やサービスそのものの品質なども問われますし、もっと言えば「値頃感」が問われます。

そしてマーケットシェアを拡大するには宣伝や広告のほかに、流通戦略が重要です。最終的な購買部分をしっかり押さえない限り、売上に連動した数字を高めることはできません。
そのため営業や流通チャネルをしっかり整備することがポイントになってきます。

マーケットシェア(市場シェア)、マインドシェア、ハートシェア、顧客シェア――いずれも高いほうがいいのですが、それぞれの分母をしっかり意識しなければなりません。
シェアに限らず比率(割合)は分母次第で簡単に大きくも小さくもなります。その分母が適切なのかを見極めることのほうが大事ですし、それがマーケティングの肝だとぼくは思います。

河野 について

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

マーケティングにおける「シェア」いろいろ」への4件のコメント

  1. Yasuyoshi Kuramori
    2010.12.22

    Twitter、Facebook、mixiなどのソーシャルメディアの場合、タイムシェアもポイントですね。
    顧客が持つ時間は皆1日24時間。携帯電話を利用する時間、PCの前に座る時間は限られますから、いかに長く使ってもらえるかは大きなポイントになります。
    テレビCMなどでは、放送エリア内での占拠率も視聴率とともに重要視されるようですね。

    • smashmedia
      2010.12.22

      コメントありがとうございます。
      たしかに「顧客のタイムシェア」もありますね。

      24時間であると同時に、ダブルスクリーンやトリプルスクリーンといった「ながら」を考えると単純に24時間じゃなくなってるなあという感じもしますね。
      と同時にこの「ながら」を考えると、長さ(量)だけではなく「質」も重要になってくるわけで。

      • Yasuyoshi Kuramori
        2010.12.22

        "YouTube-leanback”はWスクリーンを想定して作った「ながら」サービスなのかな?
        空いてるスクリーンにダラダラと流す感じ。

        ”leanback"(背もたれによりかかる)っていうのもこれからのキーワードかもしれませんね。

        • smashmedia
          2010.12.22

          そうですね、ウェブはもともとリーンフォワードなメディア(でありツール)なので、そのコンテンツの消化(=閲覧)方法としてはおそらくテレビなどになるのでしょうが、リーンバックする時間がないと疲れちゃうのも事実なので、コンテンツの配信形態がいろいろ模索されるんでしょうね。

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