クロスセルとアップセル

今日はクロスセルアップセルについて解説します。

クロスセルとアップセル

このふたつはぼくたちの日常でもしばしば目にする販売手法です。
いちばんわかりやすいのはハンバーガーチェーン店で「ご一緒にポテトもいかがですか?」と薦められるのがクロスセルで、「あと50円払えばポテトをMサイズからLサイズにできます」というのがアップセルです。

つまりクロスセルとは、ある商品(この場合はハンバーガー)の購入を考えている消費者に対し、その商品に関連する商品(この場合はポテト)や、組み合わせることによって割引になる商品(この場合はセットメニュー)などの購入を勧める販売方法です。
クロスセルが目指すのは、ひとりあたりの購入点数を増やすことで、その結果として顧客の購入金額を向上させることです。

一方、アップセルとは、ある商品(この場合はポテト)の購入を考えている顧客に対し、当初決めていた価格帯の商品(この場合はMサイズ)よりも上位の商品(この場合はLサイズ)を推薦する販売方法のことです。
アップセルが目指すのは、購入点数は同じでもより単価を高く(あるいは利益率や利益額を高く)することで、その結果として顧客の購入金額を向上させることです。

いずれも顧客の購入金額を向上させる点では一致していますが、そのアプローチが異なります。

さまざまなところで見かけるクロスセル、アップセル

ほかにもスーパーのレジ前で乾電池やガムなどの単価の高い消耗品や日用品が置いてあることがよくありますが、あれもクロスセルですね。
ECサイトのレコメンドエンジンももうひとつ商品の購入を促していますから、これもクロスセルを狙ったものです。レコメンドエンジンの場合は商品同士の相関関係(同時に購入されることが多い)などを元に推薦しますが、単純に販売数ランキング上位の商品を紹介することもあります。

一方、アップセルもよく見かけます。たとえばレストランなどのコースメニューは名称はさまざまありますが、だいたい松竹梅の構成になっています。
クルマにせよ、iPodにせよ、装備品や容量のちがいから複数のラインナップが用意されていて、だいたい1.5倍から2倍の価格差がありますが、買わせたいのはより上位のランクです。
とくにぼくらは「どうせ買うなら後悔したくない」という心理が働きますから、松竹梅で提示されるとなかなかいちばん下の商品は購入しづらいので、そこをうまくついているんですよね。

クロスセルとアップセルの課題

販売側の戦略手法としてはクロスセルアップセルは常套手段と言ってもいいですし、企業の売上や利益をアップするために積極的に採用するべきだと思います。
ただし、それはあくまでも顧客に対する付加価値や納得性があってのことです。

たとえばクロスセルがただの押し売りに受け取られたら本末転倒です。レジ前の通路をふさぐほどクロスセル用の商品の棚がはみ出していれば、そのお客さんは二度と来店してくれないでしょう。ECでも同じです。あれもどうですか、これもどうですかとページを遷移するたびにくどいくらいレコメンドされるサイトでは二度と買いたくないと思われます。

アップセルも同様です。薦められたからとポテトをLサイズにしたのに、けっきょく食べきれなかったら薦めた店員、ひいては店舗に対して不信感が生まれます。
ぼくもかつて店員に薦められるままに録音機能付きのMDウォークマンを買いましたが、けっきょく録音機能を使うことはなく(録音はラジカセ側でできるので)、再生専用の安いほうを買っておけばよかったと後悔したことがあります。

クロスセルにしろ、アップセルにしろ、顧客の負担額は増している以上、それに見合った価値提供ができるのかをしっかり考えなければなりません。
そうでなければ顧客への押し付け感が強くなり、かえって不信感を招くことになりかねません。

重要なのは納得性や満足感です。
あくまでも「顧客のニーズ」ありきであることを忘れてはなりません。

河野

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

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