この本は献本いただきました。

前書きと後書きを読めば、だいたいその人のスタンスがわかるんだけど、著者・阿部さんの主張は「小手先」のテクニックではなく、「本質」を捉えることが成功への近道だというものです。

この点はぼくも強く同意します。リスティング広告に限った話ではなく、それこそSEOについても検索エンジンのアルゴリズムが変わるたびにいたちごっこのように対策を講じるよりも「検索エンジンはユーザーニーズに応えるためにも、より価値のあるサイトを上位に表示したい」という彼らのアルゴリズムの根底のある思想を踏まえ、自分のサイトを改善することのほうがはるかにSEOになるわけです。

またリスティング広告は全体施策の一部に過ぎないという指摘にも非常に共感しました。この視点が欠けている主張も多いのですが、けっきょくのところCTR(クリック率)を最大化しても購入に繋がらなければ予算の無駄遣いですし、またCVR(コンバージョン率)やCPA(注文獲得単価)を気にしすぎて出稿を絞ると売上の機会損失が発生します。
常に考えるべきは全体最適であって、どうやって利益を生み出すかという、商売の基本原理がまず先になければなりません。

内容について、気になったポイントをいくつか挙げます。

まず「囲い込む」という言葉が安易に使われていて(P.13)、これはダメですね。
またLTVについて触れられているんですけど(P.42)、ECサイトの場合はリスティング広告経由のお客さんが二度目もまたリスティング広告を経由して来店されることも多いので(ブックマークに登録するより店名で検索するほうが簡単ですからね)、単純化して説明したほうがわかりやすいとはいえ、ここまでコストメリットを主張するのは現実的ではないなと感じました。
と同時にCPAだけを見てはいけないという主張は繰り返しになりますけど、その通りだと思います。

リスティング広告でいちばん難しく、また個人差が出るのはキーワードを考える部分ですが、いろんな方法が紹介されていたのは参考になると思います。またニーズの連想という考え方そのものに触れられているのもいいですね(P.50)。
個人的にはここで紹介されたキーワードアドバイスツールや類語のサービスとあわせて、自社サイト内の検索キーワードのログや、サイトへの流入分析をしてどのようなキーワードで検索エンジンから来訪しているのかを見たらいいと思います。

P.74で紹介されている、ミスタイプなどの表記揺れキーワードはぼくの経験上でも有効でした。獲得数は多くないんですけど、押さえとして出稿しておきたいですね。

ぼく自身はリスティング広告の実務から離れてけっこう経ちますけど、画面キャプチャも多く、非常にわかりやすく書かれているので読みやすかったです。
入門者向けの実務書、という位置付けだと思うんですけど、現場の担当者だけじゃなくて、できれば予算の権限を握っている管理職の人が読むことをオススメします。リスティング広告に関しては、もっと予算を投下したほうが儲かるかもしれないケースがけっこうあるので、実験的に予算を増やして限界を見極めることをぜひやってほしいですね。

目次
1.リスティング広告を始める前に理解しておくべきこと
2.キーワードの展開方法
3.広告文の作り方
4.AdWordsとYahoo!リスティング広告の個別機能とテクニック
5.さらなる最適化の技法
6.モバイルリスティング広告について
付録:リスティング広告のアカウント申し込みとコンバージョンタグ設定