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アクティブサポートのはじめ方

企業によるソーシャルメディアの活用についてはPRや販促など多岐にわたりますが、ぼくは消費者との関係構築、とりわけアクティブサポートについて可能性を感じています。

アクティブサポートとは

これまで企業におけるサポートは電話やメールなど、ユーザーからの問い合わせに答えるという受け身的なものでした。こうした従来のパッシブ(受動的な)サポートに対して、アクティブサポートは自ら顧客やユーザーに対して問題解決のために能動的に行動することを言います。

自社製品の顧客や自社サービスのユーザーはいまこの瞬間もソーシャルメディア上で疑問や不満、ときには感動を書き込んでいます。検索さえすればあなたはそれを読むことができるのです。
そうした顧客に感謝を述べたり、問題解決のためのサポートを行なわないのはあまりにもったいないと思いませんか。

アクティブサポートがうまくできれば、こんなふうに驚きとともに歓迎されます。


リプとばしたわけでもないのにツイートひろってサポートしてくれるブックオフオンライン素敵。ひいきにせざるをえないじゃないの!じゃんじゃん貢いじゃうよ!Fri Aug 13 01:07:58 via TweetDeck


酔っ払った時に注文した本が届いて「いつ注文したっけ?」とつぶやいたらブックオフオンラインさん @bookoffonline に、心当たりがなかったら遠慮なく言ってね、と素敵なリプライをいただいた。Twitterの手軽さが買物を楽しくしてくれています。また注文しよう。Tue Aug 17 14:44:06 via Twittelator

今回はそんなアクティブサポートの具体的手順について解説します。

まずは覚悟を、そして体制づくりを

手順の話の前に、考えなければならないことがあります。それは覚悟をすること、そしてきちんと体制を構築することです。

アクティブサポートをするということはソーシャルメディア上に企業の代表が出て行くということです。チャネルを開くと言ってもいいでしょう。
顧客のブログにコメントを残したり、ユーザーのツイートにリプライをする、これはすべて双方向な行為です。つまり返事が届くということです。一方的にアドバイスを書き込んで終わりではありません。一度のやり取りで解決しなければ、その後もきちんとコメントを追いかけて解決するまで付き合わなければなりません。

けっして発信して終わりではありません。アクティブサポートはあくまでも顧客本位の活動です。
そして一度始めたら簡単にやめられないことも自覚しましょう。勝手にやめることは許されません(もしやめる場合はきちんと公式サイト等で告知しましょう)。

アクティブサポートそのものはそれほど難しい話ではないのですが、この覚悟を決めるところをおろそかにして始めるのはとても危険です。
ユーザーに対してチャネルを開くことの意義と覚悟を最初にしっかり確認しましょう。

社内の協力体制を構築

覚悟ができたら、社内の協力体制を構築します。
新しい組織図を作る必要はありませんが、想定される問い合わせに対して誰に聞けばわかるかをあらかじめはっきりさせておきましょう。少なくとも広報、開発、サポートに対しては部門長に話を通しておき、臨機応変に対応してもらえるように事前調整しておく必要があります。

とくにサポート部門とは密に連携を取ることになりますので部門長だけでなく、現場の担当者レベルでしっかりと話し合っておくべきです。
すでにサポートにはあらゆるパターンの問い合わせが届いているはずなので、もしFAQが用意されているのであればそれを参照させてもらうべきですし、注文に関する質問などはどうしても(顧客の登録情報や注文情報などを参照するため)サポート部門に引き継ぐ必要がありますので、その引き継ぎの手順についても事前に打ち合わせておく必要があります。
(そのためメーカーや小売業がアクティブサポートを行なう場合は、マーケティング部門よりもサポート部門のほうが適していると思います)

あくまでもアクティブサポートソーシャルCRMのひとつです。
自己満足で始めるべきではありませんし、誰彼かまわず話しかければいいというものでもありません。うまくやれば離反顧客を繋ぎ止めることができる反面、下手をすれば企業の不手際を喧伝する結果にもなりかねません。

始める前に対話を続ける覚悟と、関係部署との連絡体制をしっかり構築するようにしましょう。

アクティブサポートの手順

アクティブサポートを行なうのは簡単です。ブログやツイッターなどソーシャルメディアを検索して見つけた発言にコメントするだけです。

ブログの場合

ブログの場合はGoogleやlivedoorが提供しているブログ検索を使います。これらはRSSを配信しているので、RSSリーダーでチェックするのが便利です。
Googleアラートならメールで通知することも可能ですので

自社製品名やサービス名でブログ検索をするとアフィリエイト目的で作成されたスパムブログが大量にヒットします。スパムブログには他人のブログをそのままコピペしたようなものや、いくつかのブログの内容を適当に切り貼りしたもの(ワードサラダと言います)などさまざまなパターンがあります。
こうしたブログにコメントを残してもまったく意味がありませんので無視してけっこうです。場合によってはブランド毀損に繋がるので、削除依頼を出すなどの対処も考えたほうがいいかもしれません。

ブログでのアクティブサポートの注意点はきちんと名乗るということです。コメントは「○○会社の××です。」で書き始めましょう。
内容はメールの返事と同じように書けばいいです。ただしメールと異なり、誰でも読める場所へ書き込むことになりますので個人情報などは書かないよう注意してください。
メールアドレスの欄にはサポートの代表アドレスを入れましょう。もし担当者が辞めることになってもブログは残ります。個人のメールアドレスでは永続的を保証できませんので、会社がなくなるまで連絡が取れるメールアドレスにしておくべきです。
URLは入れても入れなくてもいいですが、トップページかFAQページのURLを入れておけばよいでしょう。

ブログに対するアクティブサポートでいちばん大変なのはコメントの追跡です。
ブログを見つけてコメントを残すまでは比較的簡単なのですが、あなたが残したコメントに対してブログの持ち主がさらにコメントしたことを検知する仕組みがありません(一部のブログではメールで通知する仕組みがあります)。

コメントしたブログを記録するためには「はてなブックマーク」などのソーシャルブックマークを使うといいでしょう。ただし利用規約で複数人での利用が禁止されているサービスが大半ですので、チームで対応する場合(そのほうが望ましいです)はそれぞれがアカウントを取得して共通のタグ(例:訪問コメント)をつけて共有するか、あるいはScuttleなどオープンソースのソーシャルブックマークのプログラムをインストールして使うことをオススメします。

http://sourceforge.net/projects/scuttle/

また、ブログにコメントを残してもすぐに見てもらえるとは限らないですし、必ず返事があるとも限りません。週末にしかブログやメールをチェックしない方もいらっしゃいますし、SPAMフィルタに引っかかっていることもあります。
ただいつまでもチェックし続けるということも、毎日チェックする量が増え続けますので現実的にはムリがあります。
そこで対応ルールとして「何日間コメントがなければチェック対象から外す」ということをあらかじめ決めておくといいでしょう。目安としては一週間から二週間くらいでいいと思います。もしコメントを残すブログが多くてチェックする量が膨大になった場合はもう少し短くてもいいでしょう。

ツイッター検索

ツイッターの場合、Googleのリアルタイム検索とツイッターの公式検索を使えばいいでしょう。ただし公式検索は動作が不安定ですし、数日分しか対象ではないので併用することをオススメします。
またどちらもRSSを配信しているのでブログ同様、RSSリーダーでチェックすればいいでしょう。

ツイッターでのアクティブサポートでいちばん大変なのは使える文字数が限られているということです。ツイッターは140文字と使える文字数が元々少ないのですが、アクティブサポートを行なうにあたって、まず相手を指定するために(例:@smashmedia)約10文字、ブログと同様「○○会社の××です。」と名乗るのに約10文字を使うことになります。残り約120文字しか使えません。
もしこの文字数では伝えられないと思ったら最初のリプライの最後に「(続きます)」と書いて、複数のツイートに分けて案内しましょう。さすがに5個も10個も続くと嫌がられますが、どうしても必要であれば2?3個に分けてもかまいません。

また返信する前に過去のやり取りを確認しましょう。前回と同じ案内をすることほど恥ずかしいことはありません。きちんと相手を認識して対応していることを証明するためにも、CoTweetなど過去のやり取りを履歴として残せるアプリケーションを利用するといいでしょう。複数人での利用を前提に作られているアプリケーションならなおいいです。

http://cotweet.com/

ユーザーによっては企業アカウントからのリプライを拒絶する方もいらっしゃいます。一度はともかく、嫌がられた場合にまた話しかけることがないようにするためにも対話履歴管理は重要です。

また前後のツイートをしっかり読むことも必要です。直後のツイートですでに解決していることが書かれているかもしれません。
必ず前後の(とくにそれ以降の)ツイートに目を通してからリプライしましょう。

ツイッターでアクティブサポートを行なう際にもうひとつ気をつけなければならないのは、やり取りがチャット化した場合です。
ツイッターといえども、基本的にはリアルタイムの対応でなくてもかまいません。ただしツイッターの場合、サポート対象の発言が「うまくいかない」など原因が曖昧なケースが多いため、どうしても質問を繰り返して問題を特定することになります。その際、せっかく相手がすぐに回答してくれているのにこちらが翌日まで放置することはいいことではありません。

このようなケースは速やかに電話やメールなどを案内して、サポート部門へ引き継ぐべきです。大事なのはあなたがひとりで解決することではありません。ユーザーの抱える問題をいち早く解決するために、会社が用意しているすべてのチャネルを総動員しましょう(そのために事前に連携する部署と調整しておく必要があるのです)。

ECの場合は注文などお金に関わるやり取りになることがあります。こうした場合も電話に誘導するのがよいでしょう。

最後に、対応時間はコールセンターにあわせるのがいいでしょう。もちろん理想は24時間365日の対応ですが、なかなか現実的には難しいでしょうから、そこを目標にしつつ少しずつ対応時間を延ばしていくようにしましょう。

その他のサービスの場合

ソーシャルメディアはツイッターやブログだけではありません。当然アクティブサポートの対象もそのすべてとすべきです。
ただしmixiのように企業アカウントが禁止されている(もしくは有料である)場合、Facebookのようにまだまだ日本国内での利用者が少ない場合は当面の対象から外してもいいでしょう。

これも対応時間同様、すべてを対象にすることを理想としつつ、可能な限り広範囲とすることを目標にしましょう。

アクティブサポートを実践している企業例

USではザッポスやジェットブルー、コムキャストなどが有名ですが、国内ではブックオフオンラインやソフトバンクモバイルがアクティブサポートを実践しています。


@yukitas63 ブックオフオンライン、ワタナベです。ご到着までお待たせしておりまして申し訳ございません。その後いかがでしょうか?不明点ございましたらお調べいたしますので、お手数おかけいたしますがカスタマーセンターまたはこちらのDMまでお問い合わせください。Wed Aug 25 00:57:00 via CoTweet


@tukanana 突然失礼します。SBCareです。以前よりBBモバイルポイントのつぶやき拝見させていただいております。ご希望に添えておらず申し訳ありません。ニューヨーカーズカフェの件については、担当部署に報告の上、改善に努めてまいります。貴重なご意見ありがとうございます。Wed Aug 18 08:10:40 via web

公式アカウントへのリプライに対応している企業はそれなりにあるのですが、能動的にサポートを行なってる企業はまだ少ないようです。

またブログでのアクティブサポートはブックオフオンラインのほか、貝印が「カイタッチ・プロジェクト(KAI TOUCH Project!)」として展開しています。
(残念ながらソフトバンクモバイルはツイッターのみのようです)

「カイタッチ・プロジェクト(KAI TOUCH Project!)」についてはマーケティングis.jpでも過去に紹介しています。

ソーシャルメディア時代のCRMや顧客対応を考える上で、アクティブサポートはもっと多くの企業がチャレンジすべきです。

これまでのように「困ったら電話してこい(メールしてこい)」ではなくて、そこに困ってるとブログやツイッターでつぶやいてる人がいるのが見えてる以上、近づいて行ってサポートするのは当たり前のことです。ソーシャルメディアの普及によって、それができるようになったのはむしろ歓迎すべき話です。

ここで紹介した企業はほんの一例にすぎません。他にも地道に、そして愚直にアクティブサポートを行なってる企業はたくさんあるはずです。もしアクティブサポートを行なってる企業をご存じでしたらコメントかメールで教えてください。

河野 について

当メディア編集長。コミュニケーション・デザイナー。企画屋。1997年、ニフティ入社。2001年にニフティ退職後、フリーターとして数年過ごし、2004年から2005年までオンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOを務める。ECサイト初となるトラックバックを導入し、また「入荷お知らせメール」などを考案した。また、はてな社との協業による商品の人力検索サービス等をプロデュース。2005年から2007年までシックス・アパート株式会社のマーケティング担当執行役員を務める。2007年から2010年までブックオフオンライン株式会社取締役を務め、サービスの立ち上げ全般のサポートに加え、「オトナ買い」や「デマチメール」などの独自機能を考案した。その後、フリーランスに。2014年から株式会社クラシコムに勤務。現在に至る。「アクティブサポート」や「最愛戦略」の提唱者。個人として「攻城団」と「まんがseek」を企画運営。個人のサイトはsmashmedia

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